松沢呉一のビバノン・ライフ

同性婚がもたらす由々しき事態-台北報告 雑談編 8(松沢呉一) -2,610文字-

魔都・萬華-台北報告 雑談編 7」の続きです。

 

 

 

台湾のゲイ事情

 

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前回に続き、萬華の街娼たちについて、もう少し突っ込んだ話を書いていたら、今回のCOSWAS主催のワークショップに直接関わる内容になってしまいました。「都市の再開発と浄化」というテーマです。これは改めてやるとして、今回と次回はLGBTの話。

COSWASの事務所の近くをフラフラしていたら、ドアのところにレインボーフラッグが出ていました。ここはなんだろな。ハッテン場がこんなわかりやすいシンボルを出すとは思えず、そっち方面の団体事務所かもしれない。COSWASのメンバーに聞こうと思って忘れてました。

DSCN5043今回、LGBT関連の場所には行ってないですけど、ざっと話は聞きました。いい話ではありません。

台湾では同性婚の機運が高まっているため、ネガティブな話、たとえばHIV・エイズだったり、セックスワークだったりの話題に触れられなくなっているそうです。「同性婚を実現するまで、そういう話はするな」という空気が広まってしまっているのです。

もともと台湾ではオープンにHIVが語られてきたわけではないのですが、同性婚を目標に掲げたせいでいよいよHIVに触れられなくなっているという話は以前から聞いてました。その上、セックスワークもそうなのか。ハッテン場の存在も同様です。

ヘテロ社会において受け入れられにくいことには触れず、なかったことにする。由々しき事態であります。HIV対策にとっては本当に由々しき事態なのです。台湾では薬物注射による感染者の増加は抑制できているのですが、今なお性交渉による感染は増加し続けています。多くは男性間の感染であり、そこに触れられないとなると、対策が今まで以上に容易ではなくなります。都合の悪いことに触れないため、都合の悪いことがさらに悪化していく悪循環。

「同性婚の法案が通るまでは」ということなのですが、そう簡単には通らないという見方も有力です。仮に十年かかったら、その間にすっかりそれらのテーマについては語られなくなり、HIV感染者が増え、コミュニティの変質さえ起きかねない。

公然と語られないだけではなく、「あいつらがいると邪魔」だとして排除される。同性婚が実現しないと、「お前らのせいだ」にもなってバッシングが起きる。感染者が名乗り出ることもできなくなる。これはまずい事態です。

 

 

同性婚で見えなくなるもの

 

vivanon_sentence台湾では十年ほど前、ハッテン場に警察が入り、強制的にHIV検査をするという事件がありました。国内外からの非難を浴びて、それ以降は、同様のことは起きていません。

社会的なLGBTへの理解も進んでいて、台北同志遊行(Taiwan.LGBT.Pride)は、年々参加者が増えて、アジア最大のプライド・パレードになりました。ここまではいいとして、そこが同性婚の実現を掲げたら、今度は内部からの抑圧が始まってしまった。

 

 

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