粋なプレイガールたち—丸尾長顕著『粋女伝』3-(松沢呉一) -2,878文字-
「脇毛研究に一石を投じる記述—丸尾長顕著『粋女伝』2」の続きです。
女の純情は男のいいエジキ
「ワキ毛の女王」内田高子に丸尾長顕が恋愛経験を聞いたら、「恋愛は無数よ。数えきれないわ」と答えています、このような奔放な女たちが『粋女伝』には他にも多数出ています。
全然名前を知らない人ですが、ルミ・北崎は、単身ヨーロッパに渡り、自身でファイルを持ち歩いて営業して各国にクライアントを確保、国境を越えて活躍するファッションモデルだそうです。トップクラスのモデルってわけではないですけど、懐事情も書かれていて、現在に換算すると、月に100万以上は稼いでいたよう。
現在は名前が消えてますが、こういう人たちが何人かは当時からいたらしい。アジア系のモデルが少なかったため、かえってこの頃の方がやっていけたのかも。
彼女は仕事だけではなく、男にも積極的で、ドイツ人とつきあってドイツに在住していたかと思ったら、ドイツで知り合ったフランス人の男に手を出して、ドイツ人を捨てて男とともにフランスに移動。そういったステディとは別につまみ食いをしていて、一夜をともにした男が馴れ馴れしくしてきたら、「あんた、誰よ」と知らないふり。
日本に戻ってきたと思ったら、「妊娠中絶に帰ってきたのよ」と丸尾長顕に言ったそうです。
それを本に書くのはどうかと思いますが。もう半世紀ほど経ってますし、この人はどこでどうしているのかもわからないので、私も書いてみました。
「いったいルミの恋愛は平均して何ヶ月位つづくの?」
とたずねたら
「あら月でたずねないで、週でたずねてよ」
と、ど肝を抜かれてしまった。
さしもの丸尾長顕もたじたじ。
ルミ・北崎はヤリマンならではの真理を語っています。
「でも、油断ができないわよ。いい寄られたくらいで、すぐフラフラするようじゃ、ヨーロッパではくたくたに食いものにされてしまうわ」
日本女性はもっと洗練された恋愛技術を身につけねばダメだ、と、この国際的彼女は主張するのである。
「女の純情は男のいいエジキだ」そうである。
「女の純情は男のいいエジキ」はいい言葉。男に騙されただの、弄ばれただのと泣くのは愛だの恋だのを夢見る純情派。対して、彼女のようなタイプは騙される前にポイっと捨てればそれまで。「男のエジキにならないように貞淑にせよ」は間違い。「男のエジキにならないようにガンガンやって経験値を高めよ」が適切なアドバイスです。
※海外在住のため、写真がなかったようで、ピンぼけの上に修正しているかも。『粋女伝』より
複雑怪奇な粋女・小紋順子
そんな女たちに時に呆れながらも、丸尾長顕は原則として「粋女」たちが自由に恋愛やセックスを楽しむことを肯定的、好意的に書いており、奔放なのもまた粋女の特性ってことです。
あくまで原則であって、時には怖がったりもしています。
検索しても、ひとつとしてひっかからないのですが、小紋順子という評論家がいて、丸尾長顕は彼女を「複雑怪奇な粋女」としていて、経歴やその言動を知ると、添えられた写真も怖く見えてきます。
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