松沢呉一のビバノン・ライフ

風俗嬢と占い師は似ている—動機・経費・収入比較-[ビバノン循環湯 316](松沢呉一) -7,279文字-

2004年にネットに書いたもの。冒頭に「読売新聞」とあるのは、『セックス・フォー・セール』が読売新聞の書評欄に出たことを指しています。これを見るまで、読売新聞が書評を出したことを完全に忘れてました。

セックスワークに対するインネンをつけてくる連中は、思いつきを口にしているだけですから、「搾取だ」と言ってきたら、「セックスワーク同様の剰余価値率の業種や企業があるなら挙げてみろ」「それ以上の搾取がなさけている業種や企業にどうして抗議をしないのか」と切り返しましょう。「男が経営して、女が働くところに男女の不均衡がある」と言ってくる糞弁護士には「どうして司法試験合格者の女性率は今なお2割程度なのか。その不均衡を是正してから出直せ」と切り返しましょう。

結局のところ、こういうチンピラたちは「糞道徳組」の組員であり、結論ありきです。薄っぺらな頭で、後付けのインネンを繰り出してきているだけですから、他業種と比較して、そんなところに問題があるわけではないことを常々意識しておくとよいかと思います。

この原稿は長いわりには深みはないので、暇つぶしにでも。今回追記した部分は※で処理しました。

 

 

 

占い師のドキュメンタリー

 

vivanon_sentence読売新聞」の書評がきっかけで当サイトにやってきた二人くらいの人のために、セックスワーク関連のことを書いておきましょう。今までさんざん展開してきた内容を、見せかけだけ変えて再度書いてみただけですけど、私の原稿をあんまり読んだことのない人たちには新鮮かもしれません。

10月25日の深夜、TBSで占い師のドキュメンタリーをやってました。ある女性占い師の生活を追ったものです。いかにも深夜のドキュメンタリーらしく、金のかかってない番組でありまして、途中で飽きて最後までは見なかったのですが、占い師と風俗嬢は似ているなあと改めて感じました。

似ている点はいろいろあります。

この番組で取り上げられていた女性が占い師になったのは彼氏にふられたのがきっかけです。風俗嬢にもそういうのがよくいます。どちらもその程度のきっかけで始められる仕事という言い方もできます。

店舗を構える経営者は資本がいりますが、占い師も風俗嬢も個人としては資本がほとんどいりません。占い師であればトランプやタロットカード、筮竹、水晶など、最低限の道具が必要です。雰囲気作りの衣装も必要になるかもしれません。風俗嬢の場合も下着やコンドームといったものが必要です。いつも店ではノーパンの風俗嬢もいますけど、店内での衣装がとくになく、自前の私服で客の前に出る店もありますから、そんなに汚い格好はできないでしょう。コンドームは多くの場合店が用意しますが、店によっては雑費として徴収されます。また、風俗嬢自身が用意するケースもあります。

占い師の備品は一度揃えてしまえばさほど消耗するものでなく、後者は消耗すると言っても、収入全体に占める経費はたいしたことはありませんから、いずれも、個人としての経費はほとんどかからない仕事と言っていいでしょう。ライターのように資料代、交通費、謝礼等で経費が原稿料の半分を超えるなんてことはまずないわけです(この経費が出る雑誌もありますが、自腹になることもしばしば)。

Georges de La Tour「The Fortune-Teller」

 

 

占い師と風俗嬢の共通点

 

vivanon_sentence占い師も風俗嬢もこれといった資格は必要ありません。占い師の場合は「××先生の弟子」、風俗嬢の場合は「現役女子大生」という看板が売りになることもあって、その看板を得るためには投資が必要ですが、そんなものがあったところで実力がなければ人気は出ません。どちらも、なんの看板もなくともやっていける実力の世界です。

ここはライターも同じです。物書きの種類によっては、家柄、出身大学、職歴、資格などが影響して、だからそういった売りを看板にする人たちがいるし、経歴詐称する人たちも後を絶たないのですが、それがなくてもやっていけます。

占い師の場合はそれなりの修行期間が必要で、学校もあります。テレビに出ていた占い師が通った学校は授業料が70万円だったとのこと。その点で経費がかかってはいます。

しかし、子どもの頃から占いが好きで、趣味が高じてプロになるのもいますから、天性の能力や技術がすでにあるなら、70万円の経費は必須というわけではありません。

風俗嬢は店の講習がある程度、あるいは私の本を読んで自習する程度ですけど、たいていの人はフェラにせよセックスにせよ、それまでの生活の中で修行しているとも言えます。ないならないで、「ウブ」が売りになったりもします。

いずれも指名が物を言う世界で、客個人の好き嫌いに左右されて、客によって合う合わないがある点で同じでしょう。「当たる・当たらない」は客によってとらえ方が違いましょうから。

※「Astrology, from The Liberal Arts

 

 

感情労働としての占い師と風俗嬢

 

vivanon_sentence彼女が働いている「占い・予言の館」という店は、銀座、原宿、渋谷、小岩に4店舗あって、もっとも指名が多いのは男性占い師なんだそうです(※現在は銀座にしかないようです)。

これは客の多くが女性であることと関わっているのかも。美容師の数は女性の方が多いのに、トップクラスの人気があるのは男性美容師です。

 

 

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