松沢呉一のビバノン・ライフ

架空派と実在派—ズリネタ調査報告 4[ビバノン循環湯 321] (松沢呉一) -2,648文字-

 「カネヤマシンのオナニー—ズリネタ調査報告 3」の続きです。

 

 

 

実在か架空か

 

vivanon_sentence今回は、「ズリネタは実在か架空か」というのがテーマです。

前々回書いたように、私は実在している存在をズリネタにすることがほとんどありません。

エロ雑誌やAVのモデルたちは実在しているわけですが、どこの誰かも知りませんから、私の頭の中で作り上げた架空の存在に限りなく近いのです。自分の頭の中でズリネタを作り上げる時の素材にしているに過ぎにないとでも言いますか。

ですから、直接知っているモデルが出ていると、センズリこけません。「おお、頑張っているな」と高校の卒業アルバムを見るような気分にはなりますが、センズリ的に言うと、そのページ分、損した気がします。

私の好みにピッタリで、今までさんざんズリネタにしてきたモデルでも、知り合ってしまうと、そのあとパタリと使用しなくなります。妄想上の彼女の方がいい女だったりすると、センズリ的には知り合わなければよかったと後悔さえします。

せっかくセンズリこいている時に、からみをやっている男優が知り合いだったことに気づいても、仕事現場の雰囲気が嗅ぎ取れてしまって興ざめです。「なんだよ、これは仕事かよ」って気分になるのです。目線を入れていても知り合いだとわかりますからね。これはAVの会社に就職したがために、AVをズリネタに出来なくなった二宮さんと近い。

どっちみち全部仕事なんですけど、知らない男と知らない女がからんでいると、ファンタジーの世界に飛ばせてくれます。

 

 

リテラシーがないと人生は楽しい

 

vivanon_sentence最近聞いて笑ったんですけど、一時期、週刊誌が「透けるカメラ」とかってバカ企画をよくやっていたじゃないですか。テニスをしている女のお尻がくり抜いてあってケツが丸見えだったり、電車の中の女の胸部がくり抜いてあってオッパイが丸出しだったり。

アサ芸」もそういうのをやっていたんですけど、読者からの問い合わせ電話があり、「あのカメラはどこで売っているんですか」と聞かれて、「ウソに決まっているじゃないですか」と言えず、「企業秘密です」と答えたそうです。「おまえの雑誌はウソを書くのか」って怒られても困るし。

バカなんじゃないかと思いますけど、こういう人たちって幸せですよね。

私もセンズリこいている時は、その読者と同じような純粋無垢な気持ちで、その世界に入り込めていて、なのに知り合いが出ていると、現実世界に引き戻されてしまうわけです。「おまえの雑誌はウソを載せるのか」って怒ったりして。

私がエロ雑誌の編集者になったり、AVメーカーで働いたりしたら、今よりもっと幻想の世界で遊べなくなって、センズリライフはとても淋しいものになっていたでしょう。

瀧沢勝知さんも私と同じタイプのようです。

 

 

とくに「これ」というのはないです。

ネットで見つけた動画でも週刊誌のグラビアでも

マンガや小説の描写でも何でもOK。

逆にぜんぜんネタにならないのはよく知ってる女性で、仲良くなればなるほどひとり用のネタにはなりません。

知人レベルだといけるけど、友だちや彼女になるとダメってことだと思います。

なぜなのかは自分ではよくわかりません。

 

 

私も大学くらいまでは知人ですることができましたけど、どんどん架空オナニーの傾向が強まって、20代のうちには、身近な相手にはシャッターを閉じるようになりました。想像が広がらなくて、都合のいい物語が作れなくなってしまうんですよね。

もちろん、できないわけではないのですが、できるのは会っているのに匿名性の強い存在です。たまたまどっかで見かけただけとか。瀧沢さんが言う「知人レベル」というのと同じでしょう。輪郭がはっきりしてくるに従ってできなくなりますよね。「できなくなる」というより「したくなくなる」かな。

 

 

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