松沢呉一のビバノン・ライフ

大正から昭和にかけて女の職業は拡大—女言葉の一世紀 78-(松沢呉一) -3,350文字-

大正時代の婦人職業一覧—女言葉の一世紀 77」の続きです。

 

 

 

昭和初期の婦人職業

 

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前回の比較として、もう少し時代があとのものを見てみましょう。経済知識社編『現代女子職業読本』(昭和十年)では担当者への取材もしていて読ませます。

序文にこうあります。

 

今日、女子就職戦線は無限に拡大して行き、所によっては、その人数に於て男子を陵駕してゐる事実は、誠に慶賀すべき現象であります。

 

女子の社会進出をバックアップするのがこれらの本であり、それが大量に出されていたことから、時代の変化を読み取れます。「無限」は言い過ぎとして、現にこの時期、女の仕事は拡大し続けていました。

こちらで取り上げている職業は以下。

 

遞信省貯金局女事務員

東京中央電話局事務員

鐵道省女事務員

內閣印刷局女子工員

日本銀行女事務員

日本勸業銀行女事務員

三越女店員

松坂屋女店員

高島屋女店員

松屋女店員

白木屋女店

地下鐵ストア女店員

列車食堂の女給仕人

箏曲の先生

三味線の師匠

お茶の師範

生花の師匠

書道の先生

琵琶の師匠

日本舞踊の師匠

西洋舞踊家

女寫眞師

看護婦

バスの車掌

ガソリン・ガール

マネキン

ダンサー

レビユー・ガール

喫茶ガール

スヰート・ガール

医者、音楽家、芸術家は学校を出るしかないため、医学学校、音楽学校、芸術学校を以上とは別に取り上げています。

 

 

百貨店の発展が女子雇用に寄与

 

vivanon_sentence官公庁からダンサー、喫茶ガールまで範囲が広く、そのくせ百貨店は五店舗をそれぞれ取材していて、バランスがおかしいような気もしますが、百貨店はそれだけ大きな雇用を提供するようになっていたのです。

 

 

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