オーストラリアと何が違うかを考え続けたい—スカーレットロード[追加 3]- (松沢呉一) -2,817文字-
「日本での実現性を考える—スカーレットロード[追加 2]」の続きです。
いるとしても極わずか
前回見たように、オーストラリアと日本ではアクティビストの数がまったく違います。
映画を作るとしたら、「アクティビスト」という条件は外して主人公を探すしかない。「障害のある客」も条件をゆるめて、ただの客とします。「セックスワーカーとその客、友人」だったら、なんとかドキュメンタリーに出てくれそうな人がいそう。
ストリッパーの場合はおっかけの客がいますが、AVの場合は直接接する客がいないので、男優としておきましょう。AV女優やストリッパーは顔を出してナンボの仕事ですから、自身は出られるのが多い。同僚や友だちまではいるでしょう。
また、女王様だったらオープンな人が多く、客にも一緒にイベントに出ているケースや客とともにAVに出ているケースがありますし、友だちも出るのはいるでしょう。なんだったら、友だちとして私が出てもいいし。
女王様の場合、家族も恋人も知っているのは1割か2割はいそうですが、いくら知っていても、ドキュメンタリーに出るとなると話は別。とくに家族は相当に難しい。「お兄ちゃんは知っているけど、“俺の妹だってバレないようにやってくれ”と言われている」「母は知っているけど、“おとうさんには言っちゃダメ”と口止めされている」みたいなケースもよくあって、ドキュメンタリーに家族まで出ると、すべてを公開することになります。親戚一同にも隣近所にも職場にも。
また、恋人も厳しいんじゃなかろうか。女王様の中には彼氏がいることも公開しているのがいますけど、彼氏の方がたいていは出ない。まして結婚しているのに公開していない人や彼氏がいても「彼氏はいません」なんて言っていたりする人は、その段階で厳しい。
それでも全国くまなく探せば数名はいるかもしれないけれど、現役のセックスワーカーで「親、客、恋人、友だち」のすべてをクリアできるのはゼロかもしれない。
元セックスワーカーまで入れれば、川奈まり子さんのように、夫や子どもが過去の仕事を知っているのはいますし、親も知っているでしょう。なおかつ彼女はアクティビストと言ってもいい。相当に珍しい存在ですが、そのことを知っているとしても、家族がドキュメンタリーに出るかどうかはまた別の話。
※「セックスワーカーのためのアドボケーター講座・大阪編」にて
ゲイでも同じ
ゲイの知人たちとも「スカーレットロード」のような映画は可能かという話になって、セックスワーカーという条件を外して、「アクティビストのゲイで、恋人、知人まで出演するのはいるとして、親となるとほとんどいない」という話になりました。
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