松沢呉一のビバノン・ライフ

オナニーで盛り上がる女たち—ヘルス嬢たちの女子会(1)[ビバノン循環湯 370] (松沢呉一)-4,230文字-

これは2002年くらいの話。出すタイミングを逸して、数年前にメルマガ読者限定のevernoteで初公開。当時はまだ女子会という言葉はなかったか、あっても一般的ではなかったと思われて、タイトルや見出しの「女子会」は今回つけたものです。

図版はメトロポリタン美術館から「エロ話をする女たち」です。

 

 

 

ヘルス嬢たちの女子会

 

vivanon_sentenceよく行く渋谷のヘルス店に閉店間際にいたら、社長が「これから皆で飲みに行きますが、一緒に行きますか」と声をかけてくれて、私も同行させてもらうことになった。

社長は、店のあと時々女のコらを連れて飲みに行っている。これには社長なりの考えがある。この店は待機室がなく、個室待機である。よその部屋に行ってダベっていると、他の部屋に声が聞こえてしまうので、原則個室移動は禁止。

トラブルが起きやすいので、店によっては横のつながりを作らせないようにしているが、この社長は、友だちのような関係を作ることで、女のコが店に不平不満を言いやすく、同時に店も無理を言いやすい環境を作ろうとしている。中途半端に横につながると、女のコたちの不平不満が増幅されるため、それならすべてオープンにしようってことだ。

もちろん、これは強制ではなく、社長のおごりで行きたい人だけが参加する。行くメンツはおおむね一緒らしい。

「実家に住んでいるので深夜まではいられない」「たくさんの人がいると気後れする」「店や女のコらとの関係を深めたくない」「翌日も朝から別の仕事がある」といった事情のあるコらは参加しない。

参加するコらは連帯感を強める中、参加しないコらは孤立感を抱きそうで、この方法はいい点、悪い点、どっちもありそうだ。

私を含めて総勢7名で、山手線の脇にあるクラブのような、バーのような広い店に入った。社長、店の女の子4名、その友だち1名と私である。

社長と1人の女のコは他のテーブルで何やら話し合いをしていて、こちらのテーブルには、女のコ4人と私がいる。たぶん彼女らは私を男として意識していない。ふだんの女子たちの集まりと一緒の状態かと思う。

※Unknown「Three Women at Tea

 

 

オナニーと風俗で男を見極める力をつける

 

vivanon_sentence私は、よく知っている由真ちゃんとオナニーの話を始めた。

「今でもセックスではそんなにイケないから、イクのはオナニー。週に3回ペースかな。オナニーを最初にしたのは短大生の時。19歳かな。遅いよね。セックスも私は高校卒業してからだからさ」

「あ、そうなんだ。てっきり高校の時からガンガン遊んでいるタイプかと思っていたよ」

「よくそう言われるんだけど、遅咲きだったんだよ。でも、遅咲きは怖いよ」

「遅れを取り戻そうとするからな」

「そうそう。今は仕事でそこそこエッチなことができるから、セックスは彼氏だけって割り切れるけど、当時は誘われるともれなくついていく、みたいな。それが1年くらい続いた時に、私のあまりに軽率な行動を友だちに心配されて、“いいセックスを知らないからだよ”って言われて、その時はカチンと来て、“何がいいセックスだよ”って反発したんだけど、たしかに私はイクってわかってなかったんだよね。わからないながら、“これがイクってことかなあ”とか思っていたんだけどさ」

「まっ、だいたいそういうことを言う段階ではイッてないよね」

「今考えるとそうなんだよ。そんなあいまいなもんじゃないよね。その時も友だちに“それはたぶん違うよ”って言われた。“オナニーしてる?”って聞かれて、“してない”って答えたら、イクことを覚えたらするはずだって言うんだよ。それで、その友だちにオナニーを教わったんだよ。“オナニーでまずイクことを覚えなよ。そしたら、いろんな男とするのがバカバカしくなるから”って」

ここは人によりけりだが、どういうもんか、イケないうちは無駄なセックスを繰り返すタイプがいるのは事実。

「オナニーしたらメチャ気持ちいいじゃん。すぐにイケたよ。“あ、全然イッてなかった、今までオナニーより気持ちいくないことをしていた”ってやっとわかって、それからオナニーより気持ちのいいセックスをする人としかしなくなった。オナニーがなかったら、今でもヤリマン生活をしていたかもしれない。だから、その子には感謝している」

「オナニーの恩人」

「ホントにそうだよ。何事も経験しないとわからないよね。短大の時にもスカウトマンに風俗をやらないかって言われていて、“絶対やんねえ”と思っていたんだけど、この仕事をやると、うまいへたが見極められるので、かえって誰でもいいってことではなくなるよね。これもやってみて初めてわかったよ」

 

 

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