松沢呉一のビバノン・ライフ

ラブホにノゾキ部屋があるとの噂とエバーソフト風呂-[ビバノン循環湯 392] (松沢呉一) -2,712文字-

「東スポ」の連載を2本合体させました。

 

 

ラブホテルにはオーナーが覗ける仕掛けがある

 

vivanon_sentenceラブホテルには、オーナーが密かに設置したノゾキの仕掛けがあるとの噂が根強くある。部屋と部屋の間に隙間を作り、マジックミラーや穴を通して覗くのだ。

今は、建物の規模が大きくなり、建設に関わる会社も大きくなり、かつ設計、内装、設備など関連する会社が増えて、オーナーの独断でそんなものを作れる時代ではない。そんなことをするならカメラを仕掛けて盗撮でもした方がはるかに安全確実だ。

これは都市伝説の類いであり、存在していたとしたら小規模な連れ込み宿の時代ではなかろうか。それなら大層な仕掛けは必要がなく、床の間にでも穴を開けておいて、隣の部屋の押し入れから覗けるようにすればいいだけだ。

そう私は思っていたのだが、先日、ラブホテル・プロデューサーのビタミン三浦氏(その後お亡くなりになった)に聞いたところよると、それほど古い時代じゃなくても、そういう例は実際にあったらしい。設計段階ではそんなスペースはなく、建設が始まってから懇意の施工業者に依頼して、隠し部屋を作ってもらう。部屋と部屋の間に人一人が通れる通路を作ればいいだけなので、工事としてはさほど難しい話ではない。

三浦氏によると、オーナー個人の愉しみだけでなく、近所の商店主や関係の業者を集めて鑑賞会をやっていたという。妻たちには内緒で男たちのみが参加したのだろうが、自分の妻がよその男と入ってくるところを見てしまう悲喜劇はなかったのだろうか。隠し部屋がなくても、フロントで見られてしまうのだから、近所のラブホは使わないか。

※写真は古い歌舞伎町のラブホ「松月」。鉄筋だが、中は連れ込み旅館風。

 

 

スポンジ風呂はエアマットの原型か

 

vivanon_sentence寝室読本』(自由出版社/発行年は不明だが、昭和20年代後半のもの)に、「悦楽の園 桃色ホテル覗き」という記事が出ている。この頃はまだラブホテルという名称はなく、「桃色ホテル」「さかさクラゲ」「アベックホテル」と呼ばれていた。

そういったホテルを見て回るという趣旨の記事なのだが、この中に、オーナーが風呂場を覗けるようになっているホテルが紹介されている。

中野にあるホテルのオーナーは穴を覗いてアベックの生態を観察し、アベックの多くは風呂でいちゃつくことを発見、そこからスポンジ風呂というものを思いついたと語る。

この筆者もアベックがスポンジ風呂を使用するところを覗かせてもらっているのだが、湯船の横にあるスポンジ製のベッドでアベックは石鹸だらけになっての狂態を繰り広げる。

つまり、このスポンジ風呂は、ソープランドにあるエアマットの原型のようなものである。

しかし、筆者によると、実はこのホテルの前に池袋のホテルが同種のものを設置していて、ノゾキによって思いついたというのは、オーナーのウソらしい。本当はただの趣味のノゾキだが、あたかも客のニーズを知るための調査であるかのように見せかけたってところか。

 

 

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