松沢呉一のビバノン・ライフ

うまくいっているケースもいっぱいある—風俗嬢と客の結婚(下)-[ビバノン循環湯 479] (松沢呉一) -3,167文字-

うまくいかないケースの方がずっと多いと客引きは言う—風俗嬢と客の結婚(上)」の続きです。

 

 

 

夫公認は必ずしもいいこととは言えない

 

vivanon_sentence人妻風俗嬢には夫公認で働き出した人が時々いる。夫がリストラになったり、会社が潰れたりして、このままでは米も買えないというので、話し合いの末、妻が風俗で働き出す。面接に来た時には帰りの交通費もなく、子どものミルクも買えない状態だったなんて悲惨話は今でもたまに聞く。

これによって「妻をいつまでも働かせるわけにはいかない」と夫が奮起して、就職活動に精を出して仕事を始め、夫の給料が出るようになって、きっぱりと妻は仕事を辞めることもある。仕事が楽しくなってしまって辞めないこともよくあるが。

どっちにしても夫が働くようになればいいのだが、妻が毎日大金を持って帰るようになり、今までよりいい生活ができるようになると働くのがバカバカしくなるのがいる。これに慣れてしまって、仕事が見つかってもすぐに我慢できずに辞める。「辞めてもなんとかなる」と思って踏ん張れなくなるのだ。妻としても、働くのが楽しくなって、結局夫はヒモになる。怠け者の血が流れている男はこうなりやすい。

皮肉なもので、家計をちょっと助けたい程度の理由だったり、あるいは刺激が欲しいなんて社会的に言えばふしだらな理由で、夫には時給900円のパートをやっているとウソを言って風俗で働き、隠し貯金をしているような奥さんの方が家庭は安定し、夫も堕落しなくて済む。つまりは夫婦だからと言ってすべては晒さない方がいいようだ。

結局これは風俗という特殊な業種に関わることだからだと思う。偏見が強いだの、妻が他の男に抱かれるのがいいわけがないだのといった話ではなく、非日常と日常のバランスの問題である。

非日常の世界である風俗での出会いは日常とは違う精神状態にある。女のコらも非日常として切り離すから、日常ではできないこともやれる。そこでの出会いを日常に延長しようとするとしばしば無理が出る。店で知り合って気が合って、外で会った途端に会話が弾まなくなるようなものだ。環境が決定的に違うのだ。

旅先でツアーガイドさんに恋をするのも、同じツアーの客に恋をするのも、海外で出逢った地元の人に恋をするのも一緒だ。非日常の環境では恋が生まれやすい。それは判断力が鈍っているということだったりもする。あるいは別の判断力が働いていて、それが日常で通用するとは限らない。そのことをしっかり認識しておいた方がよさそうだ。

LoVE LoVE

 

 

非日常から日常へ連れ戻される

 

vivanon_sentence知り合いの編集者に聞いた話。

子どものいる編プロの社員が風俗嬢とつきあい始めたのだが、それが妻にバレて離婚することになった。彼が一方的に悪いので、養育費に加えて慰謝料も払うことに合意。彼としては気持ちはすでに風俗嬢の方に移っていて、彼女と一緒に暮らしたいと思っていたため、妻との話し合いが済んで、かえって好都合である。

ところが、いざ離婚したら、その直後に風俗嬢の方からも別れ話を持ち出され、結局、ほぼ同時に二人を失ったそうだ。あとは子どもも。

それだけでなく、毎月妻には養育費を支払い、慰謝料も分割で支払わなければならないハメになった。給料がよくないため、慰謝料は安く済んだらしいが、それでも経済的ダメージは大きくて、現在彼はボロいアパートで一人暮らしをしているという。彼としても「養育費を払っても、彼女が稼いでいるから、生活はなんとかなるだろう」と甘えていたのではなかろうか。

男にも女にも「人のもんが好き」というのがいるので、そのタイプだったのかもしれないが、彼が離婚して急に現実に戻されて、「養育費を十年以上払い続けるのはイヤだ」なんてことになって、その風俗嬢も別れる気になったのかもしれない。

Vintage Postcard – Wedding Day

 

 

店で一回会っただけで客と結婚したソープ嬢

 

vivanon_sentenceもちろん全部が全部そうであるはずもなく、私の知人でもうまくいっているケースはある。

 

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