松沢呉一のビバノン・ライフ

拳銃を持っていたストーカー—風俗店のストーカー(上)[ビバノン循環湯 492] (松沢呉一)

 

書いた時期はそれぞれのエピソードでバラバラで、一本にまとめたのは七、八年前で、メルマガが初出だと思う。

以前は警察に行っても相手にされず、「そんな仕事をしているからだ」と逆に説教されたといった話を聞いたもの。以前はただつきまとわれたというだけでは捕まえることも規制することもできなかったという事情もろうが、桶川ストーカー殺人事件やストーカー規制法の制定によって、今は相当対応が違ってきている。最後に最近聞いた事例を追記しておいた。この場合はたんなるつきまといではないためでもあるのだが、「そこまで警察は調べるのか」と感心したり、驚いたり。二十年前では考えられないくらいに捕まりやすくなっているので、ストーカー体質の人々はやめた方がいいと強く言っておく。

ストーカーの写真なんて持ってないので、今回は、どことなく怖い著作権切れの写真を集めてみた。ニュースサイトがネタがない時によくやっているやつ。「どことなく」じゃなくて、本当に怖いのもあるし、よく見るとちいとも怖くないのもある。

 

 

完全に犯罪のストーカー

 

vivanon_sentence風俗嬢のエッセイ集『ワタシが決めた 2』(ポット出版)に出てくるストーカーについての原稿が衝撃だったという読者が多い。名古屋のヘルス嬢が書いてくれたもので、夜中に客がマンションのベランダからよじ登って、ガラスを割って彼女の部屋に入り込み、彼女はトレイに逃げ込んで警察を呼び、命からがら助かったというサスペンス映画みたいな話なんである。

ストーカーの話はよくあっても、ここまでの話はそうそうあるもんではない。と思っていたのだが、他にも同様の話を聞いた。

渋谷の性感ヘルスGのKちゃんが前にいた店の同僚の話である。

そのコは彼氏と一緒に住んでいるのだが、店の客につきまとわれていて、その客は店の前で待ち伏せていたりする。彼女は気をつけていたつもりだったのだが、どうやら家までつけられていたらしい。

ある夜のこと、チャイムが鳴った。彼女がドアをあけたら、その客である。慌ててドアを閉めようとしたが、男はドアをこじあけて、家の中に入り込んできた。家に来ていた彼氏が出てきて乱闘になった。男の方が強く、彼氏も彼女も蹴られたり殴られたりの暴行を受けた。

それで満足したのか、男は逃げていった。事情がわかっていない彼氏は、すぐに警察を呼ぼうとしたが、彼女は制止。なにしろ彼氏は彼女が風俗嬢をやっていることを知らないのである。警察にウソを言うわけにもいかないだろう。

彼女は「イタズラ電話をしたり、あとをつけてきているストーカーみたいなのがいる」という話だけは彼氏にしていたので、「あいつがそうだよ」と言いつつ、「ストーカーは警察を呼ぶとあとで何をするかわからないよ」なんて適当なことを言ってその場は納め、このまま店を辞めて、家も引っ越したそうである。

「相手は男がいることまでは知らなかったのか」

「だろうね。男がいることを知って逆上したんじゃないかな」

「そこまで行けば不法侵入と暴行だから、あきらかな犯罪だけど、風俗嬢というと、警察はロクに動いてくれないことがあるからなあ。それと彼氏にバレるのもまずいわなあ」

「だよね。その後どうしたからわからないけど、風俗嬢自体、もう辞めると言っていたよ」

ここまでの経験をすると、怖くてやってられまい。

1926, Woolworth Building, New York.

 

 

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