松沢呉一のビバノン・ライフ

四十代はあとがない—風俗店のストーカー(下)[ビバノン循環湯 494] (松沢呉一)

話はできるが、会話はできないタイプ—風俗店のストーカー(中)」の続きです。

 

 

 

僕のために雑誌に出てくれたんだね

 

vivanon_sentenceイメクラ嬢の話はまだ終わらなかった。

「これで店に来なくなってホッとしていたんだけど、そのあと私は店を移ってデリで働いたんですよ。ある日、ホテルに行ったらそいつなんですよ」

あちゃー。

「“僕が店とケンカしちゃったから君と会えなくなって、それでまた会えるように店を移ってくれたんだね。僕がわかるように雑誌に顔も出してくれたんだね”って言うんですよ」

もちろんこれも本心である。

「このままじゃ何をされるかわからないと怖くなって、適当なことを言ってすぐに逃げてきて、店長にも事情を話して、“私につけないでくれ”って頼んだけど、それ以降、偽名を使って指名してくるんですよ。店長だともう声でわかるんだけど、新人の従業員だとわからなくてつけちゃったりするんですよね。ドアをあけたらまたそいつで、ヤバいと思ってすぐにドアを閉めて逃げてきたこともあります。でも、そのうち来なくなったから、また代わりを見つけたんじゃないですか。あの人は一生自分が何をしているのか気づかないと思いますよ。以来、四十代で独身と聞くと、無条件に警戒してしまいます」

すぐに結婚を申し込むくらいで、結婚願望が強いのだろう。でも、結婚できていない。四十代独身だからそういう行動をするのでなく、そういう行動をするような男だから四十代で独身というわけだ。

もともとそういうタイプが四十代になっただけとも言えるのだが、それまではそういう兆候がなかった人が四十代になってそうなることがありそうだ。そこんところが少し私もわかる気がした。気がしただけだが。

‘She’s a Character Who Could Have Stepped Out of Melville or Hawthorne’ これ、刺青なんですってよ。検索すると、たしかに同様の模様がついた人の写真が出てきます。

 

 

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