お祝い金という名の借金で縛る—監禁されたヘルス嬢[3]-[ビバノン循環湯 508] (松沢呉一)
「名古屋の風俗嬢はホストが好き—監禁されたヘルス嬢[2]」の続きです。
名古屋の風俗嬢とホストは切っても切れない
優良店と言っていい、名古屋のあるヘルス店マネージャーの話。
「うちの店にもホストクラブに通っているのが何人もいますよ。うちではバンスを出しませんけど、電話の問い合わせで“バンスはできますか”と聞いてくるのはよくいます。ほとんどがホスト狂いでしょうね。ホストから“今週中に売り上げを立てなければならない”と泣きつかれたんじゃなかったら、日銭が入ってくる仕事でバンスなんていらないでしょう。そのくらい名古屋の風俗嬢とホストは切っても切れない関係にある」
この店では、バンス希望が来たら、日掛け屋を紹介している。歓楽街によくあるが、100日なら100日、出勤するたびに返済していくシステムの金融業だ。毎日あちらから店まで集金に来てくれるので、女の子らにとっては返済しやすいのである。
このマネージャーは、ブルー系列のことをこう語る。
「名古屋の風俗業界では、あの系列のやり方を知らない人はいない。キャリアの長い子だったら、たいてい知っていると思いますよ。でも、初めて入る子たちはそんなことわからないですからね。面接に来た子で、その系列にいたことがわかったら、うちでは必ず借金が残っていないかどうかを確認する。店に借金が残っていると、追い込みがかかりますから」
ブルー系列の会長は強面で知られ、追い込みも激しいらしい。
しかし、決して客は入っていないようだ。
「この業界に入る前に、僕も遊びに行ったことがあるんだけど、サービスが悪い。やる気もない。その上、時間前なのに帰された。当時は事情を知りませんでしたけど、あとになってみると、なるほどと納得しましたよ。借金返済のためにイヤイヤやっていたら、ああなるでしょう」
ホストに貢ぐのは個人の勝手、そのために借金するのも個人の自由であり、借りた金は返すのが当然である。ホストにはまった末に借金を抱えて身動きとれなくなる女たちにあまり同情する気はなれないのだが、店が系列のホストクラブにハマるように仕向けることは感心しないし、なにかにつけ借金を作らせるのも感心しない。
※Paolo Veronese「Saint Catherine of Alexandria in Prison」
取り残された街・名古屋
バブル時ならともかく、客も店を厳選する時代だ。また、ヘルス全体稼げず、ホストクラブも稼げない。そういう転換期にあることを象徴するかのように、ブルー系列はトラブル続きで、いくつかの事件によって、その名が取り沙汰されている。
『風俗嬢意識調査』ではっきり数値に出ているように、イヤイヤ働かされている感覚ではなく、仕事にやりがい、楽しみを見出し、積極的に仕事に取り組む今の世代なりのプロ意識をもつ風俗嬢が着々と増えていて、客もそういったタイプを歓迎する。そうなるとホストに頼る必要もなくなる。
どう働きやすい環境を作り、労働意欲をもたせるかに経営側の手腕が問われる。その点で、名古屋の性風俗業界はひと回りもふた回りも遅れている印象だ。
その出先機関が歌舞伎町の「名古屋系」と言われる店である。なお、私に調査を依頼してきた知人のライターは、私の情報を得たあと、歌舞伎町の「名古屋系」の店に客として入り、聞いていた通りの店だったとのこと。
名古屋のヘルス業界についての説明が大変長くなったが、これからが本題である。
※名古屋の中心部から外れた地味な街なので、あまり注目されることがないが、性風俗店の多い街、柴田。
監禁されたヘルス嬢
知人から、「監禁されていたヘルス嬢がいる」との情報を得た。
「ホントかな」とまずは疑った。店に頼まれて朝から晩までの出勤をすることになり、1ヶ月間休みもとれなかった程度の話を大袈裟に監禁とでも言っているのか、よくよく話を聞いてみたら、「私じゃなく、友だちの友だちの話」なんてオチではないかと思ったのだ。
「いや、自分が監禁されたと言ってます。暴力もふるわれたらしい。何度か会っていますけど、ウソを言うようなタイプとは思えない」と彼は言う。
しかも、監禁されていたのは名古屋のヘルスだというではないか。だとすると、会ってみる価値はあろう。
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