松沢呉一のビバノン・ライフ

レズビアンの看守/アンネリーゼ・コールマン—収容所内の愛と性[2]-(松沢呉一)

ヘレナ・チトロノヴァとフランツ・ヴンシュ/歌が救った命—収容所内の愛と性[1]」の続きです。

 

 

 

目立つ女看守

 

vivanon_sentence以下の写真を見てください。

 

 

これは処刑現場を見ると卒倒しそうになるヒムラー、人を殺していないヒトラー—人間が悪魔化するとき[下]に写真を出したベルゲン・ベルゼン強制収容所解放後のものです。英軍の命令で親衛隊と看守が、放置された遺体を埋葬しているところです。

あの回に出した写真でも、顔はわからないながら、彼女だとわかる写真があります。彼女だけスカートではないのです。以下の写真でも一人だけ目立つ。色味が目立つだけですが、トラックの上で上半身を屈めているのが彼女。

 

 

 

ベルゲン・ベルゼン強制収容所にあれだけの遺体があったのは、ドイツ軍敗走に伴う駆け込み虐殺じゃなく、腸チフスが流行したためらしい。食糧が不足し、医薬品も与えられずバタバタ死んでいったわけです。親衛隊や看守にはすでに逃げたのもいて、それを片づける人員もいなかったのでしょう。

埋葬作業に従事した親衛隊員や看守たちも感染しました。この作業による感染とは限らないですが、逮捕された親衛隊員や看守77名のうち、17名が腸チフスで死亡しています。死に過ぎ。同情する気になれないですが、マスクくらいすればよかったのに。あるいは英軍はそれを許さなかったのかもしれない。ここでも幹部は逃げ、末端が割を食う構造になってます。

この一連の写真は英人の報道写真家ジョージ・ロジャー(George Rodger)によって撮影されたものです。彼はこの光景があまりに衝撃で、従軍写真家ができなくなって、以降はアフリカ大陸や中東にわたって動物や人物を撮り続けます。

ジョージ・ロジャーの写真に彼女が写っているものが多いのは、現場でも気になる存在だったためではなかろうか。他の女看守たちがやさぐれた雰囲気を漂わせている中、彼女だけキリっとした表情をしていて知的にも見えます。ただの看守ではなく、親衛隊員なのかとも思いました。女は正規の隊員にはなれなかったのですが、補助という形で隊員になることができたのです。

 

 

少年という愛称だった女看守

 

vivanon_sentence以下の写真は英軍に捕まった際に撮られたものです。

 

 

 

 

見ればすぐにわかるように、注目した彼女は右端です。

 

 

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