「外国人はポルノが嫌い」をギャグにする外国人—消えるのはコンビニの「エロ雑誌」だけではない[1]-(松沢呉一)
肌を見せた女はコンビニから排除するのが正しいのか?
コンビニからアダルト向け雑誌が排除されたことを受けて、改めて記事をチェックしてみたのですが、「訪日外国人のクレーム」が理由になったと書いている記事が多数あります。コンビニ側が今回の措置の理由として挙げていることが元です。
水着姿さえ出版できないイスラム圏の人たちも来ているのですから、そういったクレームがゼロとは言い切れないですけど、その人たちの感覚に合わせるんだったら、女たちは肌を隠さないとならんですわね。肌を見せている女はコンビニから排除。女はサッカー観戦も禁止。
また、米国はゾーニングが厳しいですし、キリスト教原理主義者も多いですけど、よその国まで来て「エロ本売るな」って言いますかね。こういう話の大半は根拠なきデマでしょう。
半年ほど前のものですが、以下の記事は、そのことを推測させます。
聞いた人数が5人だけですけど、大いに参考になります。
「ヨーロッパでは成人誌だけでなく、性をテーマにした雑誌全般が人目につかない棚の上部に置いてあります。日本に関して言えば、最近は見なくなりましたが、コンビニで成人誌を読む人がいるのが気持ち悪い。カバーがかかっていたり、中身が読めないなら別に売ること自体はいいと思います。それに成人誌だけでなく、おおっぴらにSEXを扱う週刊誌はどうなるんでしょうか? そういった場合でも、過激な内容が袋とじに入っているぶんには、置いてもいいと思います。日本は高齢化が進んでいますけど、成人誌が規制されたら、お年寄りが困るって考え方もあるかもしれませんね」(33歳・女性・ノルウェー人)
またまたまたまた。どこの国にもこういうアバウトな人はいますね。
第一に自国をヨーロッパ代表かのように思い込むのは傲慢。イギリスやフランスやドイツの人たちはノルウェーがヨーロッパ代表だなんて聞いたら笑いますよ。
キオスクにノーカットのポルノが売られている国もあるのに対して、北欧ではたしかに客の手が届かない上の棚に置くことが多いようですが、それはチンコマンコ丸出しのもの。ハードコアのポルノです。どうやっても日本のコンビニでも書店でも販売できない。
北欧でも、日本で販売できる「PLAYBOY」程度のソフトなものは見やすい棚で販売しているはずです。流通の方式が違うため、立ち読みができないような対策はしているかと思いますけど、それは他の雑誌も同じです。
日本ではノルウェーで販売されているエロ本を法で販売できなくしているのですから、日本の方がはるかに厳しい。人の国のことをとやかく言うなら、まず自分の国がどうなっているのかを正確に理解して、かつ日本のことも正確に理解した上で比較すべし。
マリファナとタバコを同一視する人に正しい意見は言えない
たとえばマリファナの販売が合法の国がありますね。日本では吸引用のマリファナは法で販売が禁止されているのですから、マリファナとタバコを区別できずに、「ヨーロッパではタバコは専門の店でしか販売していないのに、日本ではコンビニでも販売している」と言うのはおかしいですね。そこを無視する意見に意味など一切ない。
そりゃ、マリファナもタバコも一切接点がない生活をしてきた人はその区別がつかないのは仕方がないですが、記事を書くライターがその場でツッコミを入れるか、地の文章でその間違いを指摘しなきゃダメじゃないですか。そうしないと、「やっぱりそうなのか」と思う人も出てきてしまいます。そもそもコンビニで扱っている雑誌を「成人誌」と表現することが誤解を生んでます(現実を見ることもなく異常と言い出す異常—性差別とされるものの中身 6」参照)。
ノルウェー方式がいいと思う人は、刑法175条を廃止して、その上でチンコマンコ丸出しのものをコンビニの上の棚に置いてハードコア以外のものは今まで通り販売すればいいのです。
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