ドイツでのマスク着用義務はロックダウンをゆるめるタイミングで実施された—マスク・ファシズム[12]-(松沢呉一)
「ドイツの意味のないマスク着用条例の意味—マスク・ファシズム[11]」の続きです。
マスクの義務化に対する批判
当然のことながら、ドイツでもマスク着用義務にはさまざまな批判があります。
目からの感染があり得るかどうかについては否定的な研究者もいますが、コッホ研究所(Robert Koch Institut/現在は保健省の下部にある国立の機関)はその可能性を否定していないため、ドイツではサイドカバーつきのメガネやゴーゴルの着用がよく推奨されていますし、手袋も同じです。前回見た動画でケムニッツの警官は全員手袋をしています。ザクセン州の警官は手袋を義務づけられているのではなかろうか。
「なのに、どうしてマスクだけか。マスクだけを義務化すると、他への注意が疎かになる」と批判されています。現に日本でもマスクが突出してしまっていて、他が疎かになっていることは否定できないでしょう。
「なぜFFP2以上のマスクにして、ウイルス防止ができるようにしなかったのか」といった批判もあります。そうはできないのは医療機関のマスクが不足しないようにということらしいですが、スペインができて、どうしてドイツができないのか。
どうやら医療品の製造や販売についてドイツは厳格という事情があるようで、イタリアへのマスクの輸出を禁止したため、イタリアとの関係が険悪になっています。日本で多くの人がしている精度を問わないタイプのマスクでよければ中国製で十分として、精度を問うのであれば欠陥品が多すぎる中国製品は使いたくないでしょうしね。
それでも、どの州でも4月27日までにマスクの義務化条例が施行されました。罰金の適用を延期したり、ペンディングにしたりした州が多くて、さすがにこれで罰金は厳しいことは誰もがわかっています。それでも実施。
その前に、州単位でロックダウンの規制があって、たとえばハンブルクのロックダウン規制の一覧を見てください。業種別に全部決まっているので長くなります。自分のところと無関係の業種の規則まで理解しておく必要はなく、客側も把握しておく必要はないんですけど、それにしても複雑すぎます。売春関係もあります。
集会については連邦法によって罰せられる内容もあります。とくに意図して人に感染させると連邦法で懲役刑もあります。日本でもそうであるように、民事で訴えられる国は多いでしょうが、ドイツは刑事でも罰せられます。
※売春に関するロックダウン規定(自動翻訳)。右端の数字は罰金
意味がないことを強いることに意味がある
現実にここまでマスク条例で逮捕されたり罰金刑を食らったりしたのがいるのかどうか、調べてもわかりませんでした。軽微な犯罪という意味では報道されなくてもおかしくないのですが、この件はドイツでも大いに報じられ、大いに議論されているので、逮捕者が出たら報じられそうに思います。
批判も強いので、さすがにこんな条例で逮捕するのは警察もためらわれるんじゃないですかね。警察だって意味のない条例であることはわかっているはずです。
6月にはデモ、集会に関する規制はなくす方向なので、プロテストも治まる可能性が大ですけど、それにつけても、どうして各州ともマスク着用条例を作ったのか。スペインの義務化は科学的で合理的なのと大違いで、ドイツの義務化は野蛮です。
「なんでだべなあ」と考えている時に、ちょうどスペイン風邪流行時の役に立たなかったと思われるワクチンについて調べているところだったため、「マスクは今の時代のインフルエンザ菌ワクチンなのかも」とやっと気づきました。
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