米国でも日本でも死亡者の半数以上は介護領域での感染の可能性—ベルギーで異常に多い死亡者が出た理由[4]-(松沢呉一)
「アンデルレヒトの暴動からブラック・ライヴズ・マターの暴動へ—ベルギーで異常に多い死亡者が出た理由[3]」の続きです。
米国の死亡者のうち4分の1以上は介護施設での死亡
ベルギー方式の死亡者数のうち、「確定死亡者」の数字だけを見ると、一気に数値が落ちて、介護領域で多数の人が亡くなっていることがとらえにくくなりますから、「何が起きているのか」を正しくとらえるには、推定死亡者を含めてカウントした方がいいと考えたのは理解できます。
一般のカウント方式ではこの部分が見えにくいため、過小評価されて、院内感染の方がクローズアップされがちですが、どこの国でも、表面に出るよりもずっと介護施設での感染と死亡が多いことが推測できます。
そのことを裏づける数字があります。5月末に発表された米国CMS(Center for Medicare & Medicaid. Services)の調査によると、全米の死亡者のうち、少なくとも4分の1は老人介護施設で亡くなっているとのことです。
病院に移送されて亡くなっている人もいますから、老人介護施設で感染した死亡者はもっと多いことになります。
これは検査で確定した数字ですから、ただの肺炎として処理されている例はさらに多く、ベルギー同様、半数以上が介護施設での感染なのではなかろうか。
各国事情が違うので、数字にはばらつきがあるとして、多くの国で最重要の対策場所は介護施設でしょう。
※2020年7月15日付「NHK NEWS WEB」 移送の車で感染することも当然ありそうで、複数の人を乗せると利用者間で感染しますから、利用者も医療用マスクとフェイスシールドを着用すべきです。
さて、日本では
ベルギーの数字や米国の数字によって、「問題は夜の街よりも老人施設—マスクよりもフェイスシールド[7]」に書いたことを数字で裏づけられるかもしれないと気づかされました。
日本では感染した場合、介護施設から病院に移送されることが多いでしょうから、ベルギーのように、介護領域で顕在化している数字の20倍が亡くなっているってことはさすがにないだろうと思いますが、高い率で介護施設で感染していることは間違いない。
共同通信の調査によると、5月8日の時点で、死亡者のうちの14パーセントが老人介護施設内で亡くなっているとのことです。
介護施設で死亡全体の14% 新型コロナ、共同通信自治体調査
2020.5.13 21:01 共同通信
高齢者が入所する介護施設で、新型コロナウイルスに感染した入所者、職員は8日時点で少なくとも計700人おり、このうち79人が亡くなっていたことが13日、共同通信の調査で分かった。死者はいずれも入所者で、職員はゼロ。厚生労働省によると、国内の死者(8日時点)は全体で557人。全体の死者数のうち、介護施設での死者数は約14%で、7人に1人に上った。
厚労省は感染者や死者の詳細な分析結果を公表しておらず、介護施設での全国的な死者数も不明だった。高齢者は特に重症化や死亡リスクが高い「感染弱者」とされる。マスクや防護服の不足も深刻で、一気に大規模なクラスター(集団感染)となり、直撃した形だ。海外では「介護崩壊」が起きており、日本でも対策が急務となる。
14パーセントだったらたいしたことがないようにも思えましょうし、この数字は介護施設で感染して死亡した人の総数だと受け取って書かれた記事が散見できますが、「介護施設での死者数」という表現からして、この数字には施設から病院に移送されて亡くなったケースは入っていないのでは? さもないと病院の死亡者数から、介護施設から移送された分を引く必要があって、それをやらないと人数の重複が起きます。病院がそんなことをしますかね。
この記事以上に詳しい報告は公開されていないので、はっきりしないのですが、「もしそうであるなら」という前提で話を進めます。
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