松沢呉一のビバノン・ライフ

職場の恋愛契約はどう機能するか—懲戒の基準[45]-(松沢呉一)

「積極的合意」の会社版・職場の恋愛契約(lomance contract)—懲戒の基準[44]」の続きです。

 

 

 

恋愛契約の中身

 

vivanon_sentence以下は職場恋愛契約の例として出されている9項目です(「9 Items to Include in Your Office ‘Love Contract’ from HRDA2018 Keynote Kevin Sheridan」より)。

 

 

  1. Acknowledge that they recognize their employer as an Equal Opportunity Workplace.
  2. Affirm that their employer does not tolerate any form of harassment, abuse of power, and/or discrimination.
  3. Agree to report any perceived harassment, abuse, and/or discrimination to management.
  4. Recognize that they have knowingly entered an entirely consensual relationship.
  5. Maintain complete professionalism at work, despite their personal relationship, especially if their personal relationship ends.
  6. Promise that their relationship will not have a negative impact on their work or productivity.
  7. They will not engage in any public displays of affection or other behaviors that might create a hostile work environment for others, or that might make others uncomfortable.
  8. Agree that their relationship may require them to transfer to another department and/or remove any other conflicts of interest in the organization’s workplace.
  9. Concur that they will not participate in any workplace decision-making process that could affect one another’s pay, promotion opportunities, hours, shift, performance reviews, or career, both while the personal relationship exists, as well if, and after, the relationship ends.

 

 

theyは恋愛する2人の社員のことです。

契約する2人は、「会社はハラスメントや差別を許容しないこと」を認めた上で、2人の関係を職場には持ち込まず、恋愛が継続している間は、相手の給与、昇給などの決定に関わらないことを約束する内容です。

つまりは、職場での恋愛契約は、職場が私的領域に介入するのではなく、私的行為を職場に持ち込む社員の公私混同を封じるものなのです。

 

 

会社を訴えないことを約束させる項目

 

vivanon_sentence上の9項目の中にはないですが、2人の関係が揉めたところで、「会社を訴えない」ことを確認する内容が盛り込まれていることもあるようです。そこまで確認しなくても、本来、合意のもとで私的領域においてなされる恋愛やセックスに伴うトラブルは2人の問題であり、会社が介入する必要はなく、むしろ介入することこそが不当と言っていい。

たとえば上司のAと部下のBが合意の上で付き合い出して、Bが別れ話を持ち出したところ、Aが「だったら解雇してやる」と言い出した場合、日本でも民事訴訟で不法行為として認められたケースがあったように記憶しますが、こんな領域のことまで会社は管理しようがなく、両者間の問題です。

実際にこれを実行し、Bが不服を申し立てた時は検討し、Aを懲戒にすることもできるとして、それまではノータッチでもいい。さもないと私的領域にまでつねに会社は口出しすることになります。「多目的トイレでセックスするのはやめなさい」なんて口出しを企業はしてはならんのです(目的外使用として刑事的責任を問われることがあるとしたら口出しすることや懲戒対象になることもあるかもしれないけれど)。企業は家族ではないし、親友でもありませんので。

「恋愛契約」に、社を訴えることができない旨を入れるのは有効でしょう。そもそもこれは会社が関与するようなことではないですから(米国でもなお確定していない部分がありそうですが)。もちろん、上の例のように、職務に関わる分野での不当な行為についてはこの範囲ではないとして。

 

 

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