松沢呉一のビバノン・ライフ

今からでも世界はスウェーデンに学べるか—スウェーデン方式は正しかった[下]-(松沢呉一)

なぜスウェーデンはああも叩かれたのか—スウェーデン方式は正しかった[中]」の続きです。

 

 

 

ヨハン・カールソン局長は「成功した」宣言

 

vivanon_sentence表に出るのはおもにアンダース・テグネルだったため、彼個人が暴走しているようにも見えて、あたかも政府をも従える独裁者であるかのように叩く記事もありましたが、そんなはずはなくて、彼は500人いる公衆衛生局の役人に過ぎず、公衆衛生局の代表でさえありません。

局長はヨハン・カールソン(Johan Carlson)で、彼も時々取材は受けていますが、言っていることは一緒です。先週彼は「スウェーデン方式は成功した」と語っています。

彼らが口を揃えて強調しているのは「持続可能な方法でなければならない」ってことです。

前々回出した国の中ではドイツ、デンマーク、ノルウェー、フィンランドが第2波といっていい状態にあって、楽観はできないのですが、かといってもうロックダウンはできない。

対してスウェーデンは楽観です。数字は低いところで安定し、経済的ダメージは最小限で留めています。とは言え、前回書いたように、決して無傷ではありません。もともとスウェーデンは北欧諸国の中では失業率が高く、ここに来てさらに上昇気味ですが、全体として他のヨーロッパ諸国よりは安定しています。

他国の大手メディアでさえも、「スウェーデン方式で人がたくさん死んだ」「スウェーデンが目指す集団免疫は失敗した」とのデマを書き放題書いていたため、スウェーデンのイメージは落ちていて、このダメージは尾を引くでしょうが、これはどう考えてもスウェーデンのせいではなく、無責任な叩き屋たちのせいです。スウェーデンを誉め称えて名誉を回復する責任がありましょう。

スウェーデンの人たちだって、国外の評判は気にするわけで、公衆衛生局の方針に対する支持も落ちましたが、それでも6割が支持。ただし、政府の方針については当初から支持が過半数を辛うじて超えていた程度で、こちらは過半数を切ったようです。政府よりも公衆衛生局の支持の方が多いのです。おそらく現在はまたいずれも上昇してましょう。

調査が明らかにしているように、社会的ストレスが少ないため、メンタルへの影響も少なく、おそらく自殺もほとんど増えない。

これから第2波が来たって変化は何もない。

※2020年7月13日付「BBC NEWS」 感染者も死亡者も落ちた7月の記事。なお半信半疑であることが読み取れますが、集団免疫についても触れています。と同時に公衆衛生局は一度も集団免疫を目指すなんて言っていないとはっきり書いています。こういうところにメディアの信頼度が出ます。ただし、なぜ感染者と死亡者が北欧の中で抜きん出て多かったのかの事情については明確な説明がないので、「スウェーデン方式のため」と誤解する人はいそうです。「スウェーデン方式は成功するまでに死亡者が多数出るのだ」と。違いますから。

 

 

スウェーデンが目指したのは持続可能な対策

 

vivanon_sentenceAnders Tegnell and the Swedish Covid experiment」でアンダース・テグネルはロックダウンは一度しかできないと言っています。

 

「閉鎖、開放、閉鎖は現実的ではない。学校を開けたり、閉じたりもできない。それは惨事になる。レストランのようなものも、開いたり閉じたりすることはおそらくできない。1回2回とやることで、完全に畳むことよりも疲弊する」

 

学校が感染拡大の場になり得ることを認識しながら、その場所の重要性をわかっていたがためにスウェーデンでは16歳以下の学校については閉鎖をしませんでした。同時に死にやすい層への対策が必須ではありますが。

16歳以下ではないですが、アンダース・テグネルは登校してはいけない日に登校したマーヴェリック・ストウ君の気持ちを理解するに違いありません。彼の行動を理解できない教師を私は理解できない。

ただ「学校が好き」とは違うのです。学校が存在することを前提にしてきた人間関係、生活、将来の計画が否定されたことが耐えられなかったのだと思います。

よく行っている食い物屋が潰れそうだというだけで、私は軽く頭が壊れそうになるのですが。それと同じ質のものが百倍くらい押し寄せてくるように感じる生徒がいることを私は理解できます。

 

 

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