松沢呉一のビバノン・ライフ

エチオピアは今も戦争気分—ポストコロナのプロテスト[51]-(松沢呉一)

ハチャル・フンデッサを殺害したのは誰か—ポストコロナのプロテスト[50]」の続きです。

 

 

アビィ・アハメド首相就任が生み出した不協和音

 

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長年虐げられてきたとの思いがつのっていたオロモの人たちとしては、アビィ・アハメドによってついにオロモの首相が誕生したと喜んだわけですが、首相としてはオロモだけを見て政治はできないわけで、融和策をとり、それがオロモ独立派には気に触ったようです。

アビィ・アハメドはオモロの中でも讃美と批判の両極を生み出し、オモロの中に不協和音を生み出します。

歴史的経緯からして、オロモ解放戦線にとって、エチオピア人民革命民主戦線は自分らの仲間たちを多数殺した許し難い存在であり、同じオロモでもアビィ・アハメドは裏切り者です。オロモ解放戦線は軟化しても、オロミアの暴力支配を進めていたオロモ解放軍は、支配地域ではアビィ・アハメドはアムハラについた裏切り者という評価を固めていきます。

政府軍もゲリラ戦術をとるオロモ解放軍を潰すことはできず、また、オロモであるアビィ・アハメドはオロモ解放軍を切り捨て虐殺した側についているわけですから、おそらくその負い目もあって、強くは出られない。

こうしてオロモ解放軍はアビィ・アハメド首相就任以降、やりたい放題をやってきました。

Wikipediaよりアビィ・アハメド首相

 

 

民間人を殺害しまくるオロモ解放軍

 

vivanon_sentenceオロモ解放軍の傍若無人ぶりは以下参照。

 

Guji Oromo need freedom from liberators

 

これもエチオピアの記事で、8月に出たものですが、ハチャル・フンデッサの殺人の前に書かれたものだとあります。筆者は副検事総長。

タイトルにあるグジ・オロモ(Guji Oromo)はオロモを構成する部族のひとつで、グジ・エリアに居住。半数以上がプロテスタントのため、その点ではオロモ内の被差別階層になるようです。

ここではオロモ解放軍をオロモ語のWaraana Bilisummaa Oromoo(WBO)と呼んでいます。政府軍もオロモ解放軍もどちらも残虐行為を繰り返し、オロモ解放軍は2018年以降、グジだけで700名の民間人を殺害したのだと書いてます。これは自分らに従わないものの殺害、略奪に伴う殺害、資金を得るための誘拐に伴う殺害です。

 

 

エチオピア人は武力以外の解決の方法を知らない

 

vivanon_sentenceここに書かれている対政府軍の戦法はゲリラ戦の典型です。オロモ解放軍はバイクを使って、人や車の間をすり抜けて、政府軍を攻撃し、民間人やその車に紛れて去って行く。政府軍が銃撃すると、巻き添えになって民間人が死ぬ。しかし、多くは協力者や支持者たちですから、もろともに撃ってしまえってことでしょう。場合によってはゲリラが隠れていそうな村ごと焼き払う。

どちらもひどい。

筆者によると、これまでエチオピアでは、公正な選挙が行なわれたことはなく、つねに武力で政治を変えてきた歴史があるため、それ以外の方法を知らず、だから武力を放棄することはなく、一般の人たちもそう信じていると言います。

 

 

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