松沢呉一のビバノン・ライフ

ソープランドに初めて来た客の意外な目的—緊急事態宣言に抗する[4]-(松沢呉一)

水商売や性風俗店はもちろん飲食店も感応の場—緊急事態宣言に抗する[3]」の続きです。

 

 

ソープランドに初めて来た客

 

vivanon_sentence最近聞いた悲しい話。もしくは面白い話、マヌケな話、気持ちいい話と受け取ってもよし。

あるソープランドで働く娘さんに聞いた話です。

数ヶ月前のこと。昨今、新規の客がなかなか来ない中、初顔の客につきました。

いかにも真面目そうな彼は言い訳のようにこう言います。

「こういうところに来るのは初めてなんです」

遊び慣れている人が「そろそろ行ってみるか」と再開するのはわかるのですが、こんな時にどうして来ようと思ったのか彼女は興味を抱きました。

「来てくれて嬉しいんですけど、どうしてそんな気になったんですか」

「妻がセックスさせてくれないんです」

夫婦ともに20代で子どもはおらず。子どもができてもいいことを前提に、これまでほどほどにセックスはしていたのですが、コロナ騒動があってからというもの、一度もしていない。

「妻はもともと潔癖性ではあったんですが、きれい好きって程度だと思っていたんですよ。ところが、ウイルスを病的に怖がるようになってしまいまして。近くの食べ物屋で働いていたんですけど、そこが休業してしまって以来、家から出なくなりました。食事も全部デリバリーになって、自分では作らない。私が帰宅しても怖がって、アルコールを全身にかけて、マスクをして話すんですよ」

とくに高齢者や病人と同居していると、家庭内感染を防ぐため、家でもマスクをするという話は時々聞きます。屋外でマスクをするんだったら、この方が意味があります。

マスクしてセックスするのはもどかしくて楽しいと私は思ってしまいますが、彼の妻の場合、セックスなんてもっての他。

「同じ部屋で寝るのも嫌がって、私は居間のソファーで寝てます」

彼女はこう聞きました。

「でも、こういうところで遊んで感染したら離婚じゃないですか」

彼は力強くこう言いました。

「それを狙っているんです!」

冗談半分ではありましょうが、すでに妻に嫌気が差しているのは事実らしい。

そんな病的な潔癖性とは一緒に住めないですわね。私は無理。病的に外で買い食いをする私のような人間は、彼女の方も無理でしょう。

※写真は本文と関係ありません

 

 

コロナ離婚と淋病離婚

 

vivanon_sentence前にコロナ離婚のことを書きましたが、実際に増えているらしい(離婚全体の数が増えているのではなく、コロナ禍を直接の、あるいは間接の理由とする離婚が増えている、あるいは離婚を考える人が増えているという意味。詳しくはここにSSを出した2020年10月17日付「DIAMOND online」を参照のこと )。考え方のズレが大きくなったり、一緒にいる時間が長くなって喧嘩ばかりするようになったり。

一方で一緒にいる時間が長くなって、絆が深まったという夫婦もいたりして、夫婦もいろいろですわ。

彼のミスは、そんな妻と結婚したこととともに、ソープランドのように湿度が高い場所ではウイルスは感染しにくいことを理解していなかったことです。「本気で感染したいのであれば」ですが。

私も今まで気にしていなかったのですが、ソープランドの個室は湯気を排出するために換気はしっかりしていそうです。湿気がこもると内装が傷みやすく、カビが生えてきたりします。

壁の上部なり天井なりに大きな換気扇がついているでしょうから、温度の高い湯気が上に流れて排出され、空気が撹拌されやすいはず。

しかも、この彼女の店ではPCR検査を義務づけてますので、少しは感染しにくい。たしかこの店は80分で、そこそこ話し込んだと言っても10分15分程度でしょう。

 

 

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