松沢呉一のビバノン・ライフ

国外にいても中国のスパイ網と監視網から逃れられない—ポストコロナのプロテスト[99]-(松沢呉一)

中国の怖さは末端にまで配置されたスパイ—ポストコロナのプロテスト[98]」の続きです。

 

 

 

新宿二丁目で中国人と出会わない不思議

 

vivanon_sentence新宿二丁目に行くといろんな国の人と出会えます。米国、英国、ドイツ、フランス、オランダ、オーストラリア、韓国、台湾など。どこの国にもLGBTはいますから。

でも、イスラム圏の人は少ない。また、中国人は少ない。私は二丁目ではどちらにも会ったことがない。

自国では許されないので、国外に出た時は羽を伸ばすという人はいますし、日本人でもそういう人はいます。しかし、とくに監視の目が怖い国があるし、国に戻ってから不利益を受ける国があります。

中国からの留学生がこれだけ来ているのですから、二丁目にももっとも多く来ていてもいいはずなのですけど、もしそこで同じ中国人の留学生に会うことを考えると足を踏み入れることができない。中国人の留学生組織はしっかりしていますから、そこに情報が流れるかもしれないと怖れる。留学生組織は互助組織でありつつ、監視組織でもあります。

もちろん、イスラム圏と違って反政府活動ほどの直接的懲罰は受けないですが、同性愛者に対する蔑視は中国ではいまなお強い。変化の兆しが見えた時期もあって、その時期に私は中国の活動家たちに会っているのですが、今は元通り。ゲイ雑誌も出せなければ、プライドパレードもできない。

日本人の考えでは、「相手もゲイなんだから問題ないべ」となるところですが、「もし」を考えると怖い。二丁目にも行けないのが中国留学生。日本人だって行けない人はいるわけですけど。

その点、SMクラブには中国人のビジネスマンが来るという話を聞きます。中国はSMについてはそんなに厳しくないはず。とくにSMクラブでは相手をするのは日本人であり、偽名を使えば情報が漏れる心配はない。しかし、他の客にも見られるSMバーは行きにくいかも。

同じように売り専バーではない出張の売り専には中国人の客が来るんじゃなかろうか。今度確認しておきます。

※2020年12月19日付「日本経済新聞」 Zoomの幹部だった中国人が、中国政府の要請に応じて、天安門事件の会議を妨害したとして解雇された上に刑事訴追されたという報道。おそらくスパイとして入り込んでいたのでなく、政府の要請に楯突くことなく従うのがいるってことでしょう。告発をした女優・邵小珊は稀なケースでしょうけど、彼女は消されることはなかったわけで、断るくらいできないわけではない。中国人はお上に従いすぎます。と思ったら、私のいるこの日本でも政府の要請に従う人たちばっかりですわ。夜遅くに不要不急でフラフラしているのはホントに少ない。24時間営業のスーパーやドンキにはちょっとは人がいて、ホッとします。

追記:SMクラブに確認しました。アジアからの客は韓国、台湾、香港からは来るのだけれど、中国は少ないとのことでした。日本に滞在している中国人は来ず、中国から出張に来る客やわざわざSMクラブに来るために来日する人たちだけです。そういう人たちはSM専用ホテルに出入りしているところを見られても顔がバレていないので問題ないのに対して、日本に住んでいる人たちは知り合いに見られるのが怖いためではなかろうか。

 

 

人間否定の権威主義国家

 

vivanon_sentenceよく政府と国民は別と言います。だいたいの国はそうです。ベラルーシやウガンダの大統領がいかにひどくても、ベラルーシ人やウガンダ人個人を警戒することはない。

しかし、中国人に対しては切り分けることができず、警戒心を解けないという人がいるのは十分理解できます。

私のようにスパイされて困ることは何もない人間に対してはスパイも寄ってこないので、そんな警戒心は不要ですけど、それでも中国人のゲイと知り合って、彼が「他に中国人のゲイって知ってますか」と聞いてきても絶対に言わない。他の国だったら「紹介するよ」になるのに。

中国のような監視が徹底している権威主義国家は、国民同士の信頼や、よその国におけるその国民の信用さえも奪う。

人間と人間の関係を分断するコロナウイルスのような中国共産党です。有効なワクチンはないものか。

※2018年8月1日付「Newsweek 日本版」 米国で反中国共産党活動をしている中国人留学生の手記。こんな感じだと思います。細心の注意が必要で、同国人も信用ができない。同国人こそ、か。

 

 

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