松沢呉一のビバノン・ライフ

失踪して強制送還されたジュリアス・セキトレコ(セチトレコ)選手の話を聞きたかった—ウガンダで民主化が成功しない理由-(松沢呉一)

ジュリアス・セキトレコ(Julius Ssekitoleko)はスペルからすると「セキトレコ」ですが、どこも「セチトレコ」になってます。なんでじゃろ。「セキトレコ」が正しく、日本の報道が間違っているという説も出てますが、こんだけの期間全メディアが間違えるかなあ。はっきりしないので、タイトルは併記、本文は「セキトレコ」にしておきます。

 

 

 

ジュリアス・セキトレコ選手の本意はなんだったのか

 

vivanon_sentence世の中には、私同様、オリンピックになんの興味もない人たちがいると思われて、いつものように、あるいはいつも以上に「ビバノン」のエロ記事や脇毛の記事、ナチスの記事を読んでいる方が多数おられます。オリンピック自体がどうでもいいので、それにまつわる騒動もどうでもよく、そんなもんに飽き飽きしている人たちがいるのは当然でしょう。

昨日のイベントのあとでパンディットの奥野君らに聞いたのですが、ここに至ってもオリンピック自体に反対している人たちが多数おられるようで、そっちにも乗れないなあ。私は賛成も反対もなく、ただ関心がない。

それでもニュースはどうしたって目に入ってきますけど、オリンピックがらみで強く私の関心を惹きつけた出来事がありました。ウガンダの重量挙げ選手ジュリアス・セキトレコ選手が大阪府泉佐野市で行方をくらませて、三重県四日市市で発見され、「難民申請したい」と言っているとも報道されていましたが、あえなく強制送還されたことです

日本まで来たのにオリンピックに出られないことが決定して、選手団から離れてウガンダに戻っても、栄誉はなく、仕事もなく、苦しい生活が待っているだけなので、半ば錯乱した状態で失踪したとも思えますが、強制送還されてウガンダに戻ったら刑務所に入れられかねないので、書き置きには本心は書けなかったのではないかとも想像します。ムセベニ政権への不満だったり、反同性愛法からの脱出だったり。彼は結婚してますが、ああいう国では体裁を整えておかないと、何を言われるかもわからんわけで。

そういった理由があったのだとすれば「難民申請したい」と言っていたとの話も納得できますけど、もしそのことさえも言えなかったのだとするとかわいそうだなあ。つっても、なんの根拠もなくて、ただただ苦しい生活から逃げたかった可能性の方が高そうですけど。

※2021年7月21日付「KAWOWO sports」 当然のことながら、ウガンダでもこのことは大きく報じられていて、この記事は四日市で発見されたことを伝えています。

 

 

ウガンダ人が不法滞在で働くのは難しい国

 

vivanon_sentence歌舞伎町と四ツ木と銭湯は別にして、都内でアフリカ諸国の国籍を持つ外国人と出会うことはそう多くはなくて、チュニジア料理店もコロナ禍に撤退したし、今現在、私の知っている範囲でコンビニで働いているのもおらず、それ以外の店で働いているのを知っているのはモロッコ人だけです。彼の両親はモロッコ人で、日本の前はモロッコにいたのですが、生まれも育ちもフランスです。国籍までは聞いてないですが、母語はフランス語で、モロッコの公用語であるアラビア語はあまり話せないと言っていたので、たぶんフランス国籍だと思います。

対してウガンダの公用語は英語ですから、その点はまだしもとして、ウガンダ人は少ないので、セキトレコ選手は日本でウガンダ人コミュニティに紛れ込むことも、守ってもらうことも難しそうです。

当初新幹線で東京に向かったと言われていたので、散歩中にセキトレコ選手に出くわすかもしれず、その場合は「不法滞在で日本にい続けても辛いぞ。重い物を持つのは得意だから運送関係での需要はあるけど、支援してくれる個人やグループがない限り、働くことは難しいし、不法滞在で何年かいると永住権を得るチャンスが出てくる国と違って、日本では強制送還されるだけなので、他の国に逃げた方がいい」と説得しようと思ってました。

東京に逃げてきたところで、その辺で出くわすことは考えにくいですが、こういう想像をするのが好きなものですから。

 

 

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