松沢呉一のビバノン・ライフ

致命的な矛盾を生みかねないメタ弱視的発想から逃れろ—島視点とは?[1]-(松沢呉一)

 

島視点の例題

 

vivanon_sentence「今ここにいる私」とは別の視点—メタ視力とは?[上]」「メタ視力がないことが問題なのでなく、それを自覚できないことが問題—メタ視力とは?[下]」で簡単に「メタ視力とはなんなのか」について説明しました。

そこから派生した考え方として、島視点があります。これについては今まで書いたことがないので、これが初公開。

島視点はメタ視力の乏しい人が陥りやすい物の見方です。これも地図を例にするとわかりやすい。繰り返しますが、地図を読む能力とメタ視力は無関係ではないながら、きれいに重なるものではありませんので、地図を読む能力がないからメタ視力がないってことにはならないので誤解なきよう。あくまで島視点を理解するためのモデルということで。

新人営業マンのAさんは九州支社から飯田橋にある東京本社勤務を命じられます。東京本社に着くや否や、新井薬師の顧客のもとに行くように命じられます。東京のことはまるでわかっていないのですが、路線図を見て、総武線で新宿に出て、西武新宿線で新井薬師に行きます。

翌日は中野ブロードウェイに営業に行きます。中野駅から飯田橋に戻ろうとしたところで社から連絡があって、新井薬師の顧客からクレームが入ったので、大急ぎでまた新井薬師に行ってくれと命じられます。Aさんは新井薬師と中野駅との関係が把握できていないので、中央線で新宿に戻り、西武新宿まで歩き、各停で新井薬師に向かいました。

中野駅から新井薬師までタクシーでワンメーターだし、バスもあります。歩いたって15分程度だったのに、新井薬師に着くのが遅くなってしまいました。

Aさんにとって新井薬師駅と中野駅はそれぞれ別の線路に位置する島のような存在であり、島と島のつながりがわかっていませんでした。

これが島視点です。実際に、地図を読むことが得意ではない人はある地点と別のある地点とのつながりがわかっていなことがよくあります。知人で、自宅以外の場所は東西南北がわかっていないのがいて、例えば池袋と新宿と渋谷の関係、中野と吉祥寺と立川の関係はわかっているのですが、そういった大きな駅以外の場所はわかっておらず、全体の中でそれぞれの位置がわかっていない。

地理の場合、迷ったら地図を見るか、もっとも早く着く方法をインターネットで検索するでしょうから、困ることはあまりないのですけど、空間的移動ではないと、そう簡単にはつながりが見いだせません。

※中野ブロードウェーには高級腕時計屋が集中。木下富美子都議がしていたシャネルの時計を見ようと思ったのですが、この時私はジャージ姿だったため、気後れして店内に入れませんでした。若い客が多い銭湯だと気後れする人はこんな感じかと思いました。

 

 

全国フェミニスト議員連盟の島視点

 

vivanon_sentenceあるいはこんな例。

よく行くコンビニに女子学生のアルバイトがいるとします。顔はすっかり覚えて挨拶もするくらいになります。ある日キャバクラに行ったら、どこかで見た気がするキャバ嬢がいるのを見かけます。平日はコンビニでバイトして、週末だけキャバクラでバイトしているのです。その時はわからず、翌週、コンビニに行ったら、「この間、お店に来てましたよね」と言われて初めて気づきます。

中身が一緒でもフェイズが違うとわからなくなる例です。この場合、一度言われるとあとはもう気づかないなんてことはない。このフェイズを結ぶ作業が重要です。

ある事象と別のある事象とはつながりがあるのに、そのつながりが見えていない人がいることに気づいたことから、これを私は島視点と名づけました。

 

 

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