松沢呉一のビバノン・ライフ

トンガの火山噴火より気になるオーストラリアの熱波やウルグアイの洪水、トルコの大雪—食い物の価格が上がる時、どこかで人が死んでいる-(松沢呉一)

 

富士山噴火に備える

 

vivanon_sentence今のところ、トンガでの噴火および津波による死者は3名とのことですが、事後の困難が続いています。被害の大きな離島とはなお連絡が取れず、港も空港も使えないため、援助物資も届けられないようです。

トンガの噴火は、富士山噴火のシミュレーションみたいなものであって、静岡でも山梨でも長野でも岐阜でも愛知でも神奈川でも東京でも、噴火場所や風向き次第で火山灰が降り積もり、交通網の遮断によって援助物資が届かない状態がしばらく続くので、少なくとも10日分の水と食料を各自備蓄した方がいいと改めて言っておきます。富士山噴火だけじゃなく、地震に備える意味でも。

今回の火山は、1991年のピナツボ火山噴火と同規模か、いくらか小さいということで、あの時と同様の気温低下をもたらすとの説も出ていて、地球温暖化が少し足踏みする可能性もありつつ、ピナツボの時と同様、農作物への影響が大きく、ただでさえ食料が足りなくなってきていて、あれもこれも値上がりしている中、いっそう小麦やトウモロコシ、肉類の価格が高騰するかもしれない。

食料の高騰はすぐさま餓死に直結します。難民のみならず、世界中で大量に餓死者が出ても気温が下がればいいと割り切れるかどうか。日本だって輸入に頼っているのですから、高みの見物とはいかない。

地球の温度が上がっても下がっても困る。八方ふさがり。また、ピナツボ火山の噴火があっても、結局、地球温暖化は進行してきたように、人類の行動や思考が根本から変わらない限り、一時しのぎ以上の意味はないので、ここに過剰な期待を寄せても無駄かと思います。最後の切り札である成層圏注入もまったく同じで、相当のリスクを伴う上に、うまくいったところで、人類の滅亡を少し先送りする効果しかないでしょう。

※2022年1月16日付「朝日新聞デジタル」 火山爆発指数っていうのがあることをこの記事で知りました。火山爆発指数についてはWikipedia参照

 

 

オーストラリアで50.7度、アフリカ各地やウルグアイで洪水

 

vivanon_sentenceそれでも火山の噴火は純然たる天災ですから、受け入れるしかないですけど、気候変動は半ば人災のため、「なんとかならんのか」との思いがつきまといます。

日本でもトンガ火山の影響による漁業被害が出てますから、大きく取り上げられるのは当然ではあるのですが、私としてはいつものように気候変動が気になってます。

1月13日、西オーストリアのオンスロウで南半球の最高気温50.7度と同じ気温を記録。1962年以来、60年ぶり。前回と違うのは、50度を超えた場所が近隣にいくつもあることです。この地域の同時期の平均気温は36.5度ということで、もともと熱い地方ではありますが(東京は8月で26度から27度くらい)、それにしても50度を各地で突破するのは異例。

オーストラリアはただでさえ穀物生産量が大きく減少しているのに、いよいよ不作になるでしょう。

 

 

next_vivanon

(残り 1196文字/全文: 2441文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ