松沢呉一のビバノン・ライフ

戦死したロシア兵のプロファイリング—ロシア兵の正体[上]-(松沢呉一)

プーチン体制に異を唱えるロシア人の動きが活発化—オリガルヒから火炎瓶まで」の続きです。

 

 

「メディアゾーン」で読むロシア兵の戦死者

 

vivanon_sentence前々回罵倒した、ロシアのラブロフ外相による「ヒトラーにユダヤの血が流れている」とのお馬鹿発言について、プーチンはイスラエルのベネット首相に電話で謝罪したとロイター通信が伝えています。

プーチンも素直に謝ることがあるんだと驚きましたが、さすがにあれは擁護できず、かつイスラエルを怒らせたのはまずかったと判断したのでしょう。それと、謝罪はラブロフ外相を叱責する意味合いもありそうです。「てめえのせいで恥をかいたじゃねえか。死ね」と。ミスをしたら死んで後始末をするロシア方式で言えば、真っ先に死ぬべきはプーチンです。

民間人を殺すロシア兵は許されず、どいつもこいつも死ねばいいですけど、彼らの一人一人を見ていくと、同情すべきところもあります。

ワレリー・ゲラシモフ上級大将負傷情報は誤報だったよう。アンドレイ・シモノフ少将死亡はほぼ確定—ひさびさの「ロシア将校戦死情報」」で、死亡した将官カウントに抜けがないか調べているうちに、大変興味深いページを見つけました。

ロシアの独立系メディア「メディアゾーン」は、4月22日付けで、「ウクライナとの戦争で誰が死ぬのか(Кто гибнет на войне с Украиной)」という記事を出しています。ロシア視点のタイトルです。答えは「我々ロシア人だ」と。

自動翻訳では正確にわからないところがあるのですが、公開された情報を精査して、個人特定ができる死者数だけをカウントしたものだと思われます。こんなもんを国内メディアが出せるはずがないので、前回書いたように、「メディアゾーン」はおそらく国外拠点です。

これによると、ロシアの死亡者は1,744人。ロシア政府の発表では、3月2日発表で498人、3月25日発表で1,351人。以降は更新されていません。

それよりは多いとしても、ウクライナ政府の数字(5月1日現在で23,500人)の10分の1以下しかいない。これは末端の兵士が死んでも情報が出ないためです。身につけていたID等によってウクライナ軍は把握していても、通常は公表しないでしょう。特別な資料を使うことなく、死亡が確定できる範囲でカウントしても、ロシアの公式発表より多いことに驚くべきか。

※2022年5月6日付「REUTERS

 

 

戦死者が見せるロシア軍の失策

 

vivanon_sentenceそのうち、少なくとも500人は空挺部隊、海兵隊、特殊部隊など、一定の訓練がなされ、装備も充実しているはずの兵隊です。その分、もっとも死にやすい戦線に送り込まれるってことでしょうか。

少なくとも20人の航空パイロットと7人のヘリコプターのパイロットが死んでいます。撃墜されているのはヘリコプターの方がずっと多いですが、ヘリコプターの乗組員はパラシュートで脱出できることが多いためではなかろうか。

全体としても撃墜された戦闘機とヘリコプターの数に比して少なすぎ、実際にはこの数倍が亡くなっていてます。

パイロットは数年間の訓練が必要なので、大量に戦死すると、補充が難しいと指摘しています。太平洋戦争時の特攻隊は貴重なパイロットを殺していったのですから、天下の愚策でした。あれはカミカゼ・ドローンの仕事です。

飛行機ほどではないにせよ、知床半島の遊覧船を見ればわかるように、船だって、地形、潮流、天候を読み込む技術は一朝一夕には身につかんでしょう。程度は違えども、戦車だって同じです。

プーチンの思い上がりのせいで、万単位の兵士をあっさり失ったロシアは今後も苦戦するはずです。ざまあ。

※2022年4月22日付「Медиазона

 

 

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