監督・永井秀樹は稀代のロマンチストかリアリスティックな戦術家か(J論)

後藤勝責任編集「トーキョーワッショイ!プレミアム」

ハットトリックまであと一歩、3点に絡んだ平岡翼の覚醒。3本めのシュートは「もう、ブチ込んでやろうと思って」【J3第23節第2報/拡大超特集】

 

2点めのシュート。

アシストの矢島輝一が迎える。

プロ入り後初の1試合2得点に、このポーズ。

◆ひとつずつ確実に課題をクリアしてきた男、平岡翼

 スピードは超一級。しかし最短距離を駆け抜けようとして相手に予測され、止められる。そこで、あえて迂回して相手が追ってこられないコースどりをする――プロ入りして間もない頃の平岡翼は、韋駄天のごとき己の快速を活かせず、ようやく個人戦術の必要性に気づいた、よちよち歩きの状態だった。

 そこから一つひとつ、技術や戦術を積み重ねていった。紅白戦に入れないメンバー外の選手は、安間貴義コーチのもとで、個人や小グループの戦術、技術を習得し、地力を高めていくことしかできない。FC東京U-23ですら控えに回る平岡はひたすらその作業を繰り返した。
 メンタルが弱いと思えば、ものの本を読んで人格改造に取り組んだ。トップチームのメンバーと同じ土俵に立つまで、長い時間がかかりそうだった。

 PKの場面では必ずチームメイトに譲る。矢島輝一とリッピ ヴェローゾと久保建英が「オレがオレが」とキッカーの座を奪おうと一触即発だった5月3日のJ3第9節vs.グルージャ盛岡戦のときも、平岡は「自分が蹴るよりもあの取り合った3人(矢島、リッピ、久保)が蹴るほうが入ると思った」と、蚊帳の外であろうとした。

キッカーの座をめぐり3人が話し合うのを尻目に、ひと仕事を終え水を補給しに向かう平岡(第9節)。

 第15節vs.SC相模原戦で中央突破を試み、足技の上達を見せた平岡。その技術に加え、精神面の変化が感じられたのは、第17節vs.福島ユナイテッドFC戦だった。自ら獲得したPKを、自ら蹴った。次の目標は先制点、決勝弾など、チームを勝利に導くゴールを決めることだったが、これも第21節vs.カターレ富山戦の、クロスがそのまま入ったかのような決勝ゴールでクリアした。

自ら得たPKを他者に譲らず、自ら決める(第17節)。

◆3得点すべてに絡み、攻守に走りまわる大車輪の活躍

 そうして一歩一歩、トップにつながる路を舗装してきた平岡が、第23節のvs.SC相模原戦でついに覚醒した。前半20分に米本拓司の芸術的なスルーパスを正確に決めてまず1点。後半11分にも米本の浮き球を矢島が胸で前方向に落としたボールを間髪入れずに決めてもう1点。最後は後半35分、左サイドで相模原ディフェンダーの森本大貴をぶっちぎって置き去りにし、中央へと切れ込んで思い切りよく右足のシュートを放った。これはゴールキーパーの田中雄大に弾かれたものの、予測していた内田宅哉が決めた。この日に撃った3本のシュートすべてが得点に結びつき、勝利を呼び込んだ。攻守に走りまくるアグレッシヴな姿勢でチームを勢いづけた働きも加味すれば、エースと言っていいパフォーマンスだった。

HERO INTERVIEW。

ゴール裏も祝福。

 安間貴義トップチームコーチ兼FC東京U-23監督に、平岡の2トップ起用について「このところの仕上がりを見てのことか」と訊ねると、こう答えられた。
「おっしゃるように、

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