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【新東京書簡】第五十六信『令和だってさ』海江田(19/5/1)

 
第五十六信 令和だってさ
 

令和時代のルーキー、安在達弥(右)と森田晃樹。これに山本理仁が加わる。


◆そんなこんなも平成に置いていく
 
 いまに始まった話ではないが、節目の過ごし方というやつがわからない。
 
 新年、さまざまな記念日、そしてこの度の新元号「令和」の幕開け。せめておごそかな気分で迎えようと、家でテレビを見たりしてのんびりしていたら、Amazonプライムで以前から気になっていた『ヘレディタリー 継承』を発見し、レンタル購入をポチッとやってしまった。
 
 これがおっそろいしのなんの。近年のスリラー映画最恐、傑作の看板に偽りなし。おれの開発した手動モザイク(両手を開き、目の前で素早く交差させて動かす。行為のバカバカしさと相まって、多少気持ちがやわらぐ)がまるで通用しない。わっと驚かすトラディショナルなホラーとタイプが違い、じんわり精神に沁み込んでくる恐怖だった。
 
 観始めて、これじゃないというのはすぐにわかった。だが、もう手遅れだ。ソファーの隅っこで身を強張らせ、吐きそうになりながら令和をお迎えした。
 
 思い出した。そういえば、昭和から平成に切り替わるときもろくなもんじゃなかった。
 
 当時、高校生のおれは学校が休みで近所のレンタルビデオ屋にチャリを走らせた。たまたま親が不在で、こいつはエロそうだと目をつけていた『沙耶のいる透視図』(高樹沙耶主演)を借りてやろうという計画である。ところが、店員が学生にはレンタル不可とかぬかしやがる。「これは芸術作品やなかとですか?」としぶとく食い下がったが、けんもほろろの対応。すごすご引き下がらざるを得なかった、あの恥ずかしさといったらない。
 
 つらつら書いているうちに、エロつながりの恥ずかしい記憶がまざまざと蘇る。こういうのって、ふとした瞬間に思い出して、ああっと声が出ますね。
 
 たしか大学生の頃、TSUTAYAで吟味に吟味を重ねたAVを数本手に取り、レジに並んだ。自分の順番がきて、相手はかわいい女の子の店員さんである。
 
 しかし、この程度で臆するようなおれではない。商品を裏返すこともなく、ごく平然と台の上に置いた。
 
「4本ですね。あと1本でお得な1000円セットになりますけど、どうされますか?」
 
 あんた、それ訊くのか。一瞬、言葉に詰まったが、ここでうろたえては男がすたる。店員は接客マニュアルに従っただけに違いない。けれども、おれはこれをすまし顔対決の挑戦状と受け取った。
 
「わかった、ちょっと待ってて」と言い、ほかの客を待たせたまま階段を駆け上がってテキトーなのをもう1本棚から抜き取って、きっちり1000円で借りてやった。どうしてあんなに意地になったのかまったくわからない。
 
 そんなこんなも平成に置いていくんだね。ネット時代の人たちには無縁の話だ。心の底から惜しくもなんともないよ。
 
◆そちらは負けなしの首位だそうで
 
 前段が長くなった。元号改正で、まるで大晦日から年越しのような気分になったが、別に何かがリセットされるわけではない。昨日までの日常が今日も続いていく。
 
 今季、ソフランもかくやと思われる、ふんわりやわらか仕上げでシーズンに入ったヴェルディだったが、ようやくチームの形らしきものが見えるようになってきた。

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