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【新東京書簡】第八十四信『不正解なりにまっとうであろうと』海江田(21/10/21)

 

山本理仁をはじめ、伸びゆく才能に幸あれ。


第八十四信 不正解なりにまっとうであろうと
 
■魅力と賭けるだけの価値は見込めた
 
 どうやらこっちの道ではなかったらしい――。
 
 でっかい「不正解」の文字がギャグ漫画みたいに上から落ちてきて、おれの頭を殴りつけた。
 
 9月1日、永井秀樹監督が辞任した。理由は成績不振とコメントしているが、そんなの誰も信じちゃいない。トリガーを引いたのは、夏に降って湧いたようなパワハラ疑惑だ。現時点ではあくまで疑惑。真否に関しては、Jリーグ、JFAで検証されている段階のため差し控える。なお、あらかじめ断っておくが、その人物の仕事の成果物と人品骨柄は別扱いという考えだ。
 願わくばシーズンの行方が決着したときに、マル、あるいはサンカク、ペケをつけられればよかったんだろうが、その機会は永遠に失われた。
 
 指導者・永井氏のサッカー観は極めて明確だった。選手の能力を見定めるうえでプライオリティの上位に置いたのは、状況判断の正確性と止める、蹴るの技術。むろん、サイズや運動能力があるに越したことはないが、それらは必須条件ではない。2019年7月、トップの監督に就任し、それまで指導してきたアカデミーとをより緊密に結ぼうとした。
 
「周囲に向けて、ヴェルディはこういうサッカーなんだよとはっきり示したい。いいサッカーをして勝つ。ここはブレずにいきたいですね。いいサッカーをしたほうが勝つ。勝つためにいいサッカーをするんだ、と」
 
 と永井氏は言い、この機に将来の礎となるような東京ヴェルディのサッカーをつくり上げ、現場の強い哲学によってクラブ全体を引っ張ろうとした。それは独自のプレーモデルの確立にも関係する。クラブの有史以来、こだわってきたテクニック、相手との駆け引き、ボールの動かし方の巧さ、それらを強さにつなげられるかもしれないとおれは考えた。
 
 そんなにうまい話が転がっているとも思えなかったが、このままでは先細っていく一方なのは目に見えており、ほかにどんな打開策がある? もう一度、クラブの核となるものをつくり上げる仕事には魅力があり、賭けるだけの価値は見込めた。
 
 だからこそ、壮絶な頓挫のダメージはエグかった。
 
 結果が出なかったことに関し、いろいろと考慮すべき余地はあるにはあるが、こうなった以上、不正解は不正解だ。それは認めるしかない。夏前は5連勝と勢いを盛り返し、永井氏自身、チームを勝たせるためにやり方を変え、自らも変わろうとしていたタイミングだっただけに悔やまれるけれども、言っても詮無いことだ。
 

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