山梨フットボール

「再び舵を切るヴァンフォーレ甲府。佐久間悟GMが自己否定をしてでも切り開きたい2019シーズン・未来とは(2)――ヴァンフォーレ甲府を応援するのではなく、“山梨県を応援しませんか”という新しいスキーム作り――」【コラム&インタビュー】

ソロバンからロマン、そして再びソロバンへ。新自由主義の潮流の中、市民クラブであり続ける難しさ

想と現実。佐久間悟代表取締役GMは「ロマンとソロバン」という言葉で表現する。誰が最初に使った言葉なのかは知らないが、経済誌などで使われている。12年から16年はロマン・ゼロとは言わないが、ソロバン寄り。ここ2シーズンは“スタイルの構築”というロマンを追っていたという認識で間違いないだろう。ロマンの方が聞こえも受けもいいと思うし、2014年に城福浩監督が退任するときはクラブとしての限界を感じていたんだと思う。”限界“というのはこれ以上がないという意味ではなく、J2で優勝してJ1に昇格し、2季連続で残留しても予算も観客も増えず、現場を預かる監督として甲府ではこれ以上は難しいと感じたからこそ、新しいチャンスを求めて契約を延長しなかった。「J1に残留することで、それが凄いことだと気が付いてくれる人が出てくることに期待したい」という趣旨の話を城福監督が在任中にしたことがあったが、結果として目に見えるような予算の増額はなかった。そして、15年、16年と佐久間悟監督兼任GMの下で残留回数を伸ばしたが、他のJ1クラブが営業収益を20億~40億円台に大きく増やす中で甲府はそれができなかった。この壁が今も目の前にあるし、来季は約13億円と大きく減らす見込み。

久間GMとサッカーの話をすると、政治や経済を含んだ話になる。佐久間GMは強化の最高責任者であるが、経営のことは常に考えていたというか、行政・企業と様々な連携のアイディアを出して――上手くいかなかったものもあるけど――形にしてきて来た。その中でよく出てくる言葉に“新自由主義”があって、これによって世界も世界の中の日本も日本の中の山梨も新しい競争にさらされている。ネットで調べると、イギリスのサッチャー首相、アメリカのレーガン大統領時代に始まり、“市場原理主義への回帰”なんて説明もある。規制緩和、減税、小さな政府という政策のもと…なんとなくのイメージでは“自由競争が活発になって新たな富を生み出す利点はあるが、強者がより強くなり、社会の分断と格差が広がる”というのが僕のざっくりとした理解。

の中でサッカークラブが、成功しているオーナーが経営する企業に経営権を譲渡(売る)ことが日本でも増えてきた。身近なところだと湘南はライザップに“買収された”。敵対的ではないので“ライザップが経営権を獲得した”という方が正確。フジタが撤退後は責任企業がなかった湘南にライザップという責任企業ができて市民クラブではなくなった。そして、町田をサイバーエージェントが買収した。会社法などの知識がないけれど、ニュースを検索すると第三者割当増資で新しい株式を町田が発行して、それをサイバーエージェントが11,5億円で買って発行株式の過半数か2/3になったということだと思う。湘南も町田も敵対買収でなく、成功している企業のオーナーがクラブの可能性や魅力に投資する形で、経営権を取得したということ。この先どうなるかは読めないが、どうなるかは興味深い。

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