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柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『亜人』 まさかコミックこんな話じゃないよね?もうちょっと説明もあるし理解もできるんだよね?そうであることを祈るよ本当 (柳下毅一郎)

公式サイトより

 

 

亜人

監督 本広克行
原作 桜井画門
脚本 瀬古浩司、山浦雅大
撮影 佐光朗
音楽 菅野祐悟
出演 佐藤健、玉山鉄二、綾野剛、城田優、千葉雄大、川栄李奈、浜辺美波、品川祐、吉行和子、大森一樹、大林宣彦、HIKAKIN

 

 

face「亜人」とは死ぬことができない新しい人類である。

冒頭にこう一枚テロップが出て、設定の説明はほぼこれだけである。ある日突然「亜人」という不死身の存在が発見される。「亜人」は死んでも甦る(逆に言うと一度死なないかぎりその人が「亜人」かどうかはわからない)。主人公の永井(佐藤健)はある日トラックにはねられるが平然と甦り、日本で三番目の「亜人」と認定される。「亜人」はすべて政府の保護下におかれる。だが、それは思いがけない苦難のはじまりであった……

原作は桜井画門の人気コミック。いやーコミック原作の映画もひどいアクション映画もでたらめなSF映画もいくつも見たけど、ここまでひどい話ははじめてだ! 設定がまったく説明なくどんどん後付けされるのはもう慣れてしまって驚きもしないが、ともかく登場人物の行動原理が何ひとつ納得いかない。ここまで登場人物に感情移入できないアクション映画もはじめてだよ! まさかコミックこんな話じゃないよね? まんがではもうちょっと説明もあるし理解もできるんだよね? そうであることを祈るよ本当。

 

 

さて、病院に入院させられた永井は、厚労省役人の戸崎(玉山鉄二)の指揮下で人体実験にかけられていた。「亜人」の不死身の謎を解くべく、戸崎は永井の体を生きながら手を切り足を切りして反応を調べていたのである。やりすぎて反応がなくなると「リセットだ」といって殺してしまう。一度死ぬとまた五体満足になって戻ってくるので、そこからまた拷問を再開。これが映画の冒頭の描写ですよ! 不死の秘密を探るとか言ってるけど、どう見ても苦しめて喜んでいるサディストの狂人である(本当に身体反応を知りたいなら、麻酔にかけてやればいいだろ!)。絵に描いたようなマッドサイエンティストたちの無間地獄に苦しんでいると、そこに乗り込んでくる二人組がいる。監視カメラに向かって「ヤッホー」とゲーム感覚で、マシンガンを乱射して警備員をかたっぱしから撃ち殺す男こそ、かつてこの研究所を脱走した日本第一号の亜人佐藤(綾野剛)だった。佐藤に対して麻酔銃を用意する警備員だが、なんせ生身でも弾をよけてしまったりする超人なうえに不死身の佐藤だからどうしようもなく警備員はバタバタと殺されていく。たまに運良く麻酔弾が当たっても、すぐに佐藤が自殺してリセットしてしまう(どういう理屈かわからないが、手足が不自由になった場合、一度死ぬと五体満足で甦ってこられるのでそっちのほうがお得なのである。血管に注入された麻酔薬もなかったことになるらしい)ので手も足も出ないまま殺されていくしかない。たちまち永井を助け出した佐藤。最後に残った二人の科学者を

「おまえを苦しめた奴なんだからおまえが殺しなよ」

と永井に銃をわたすが

「殺してもしょうがないからいいですよ」

と永井が銃を捨てると激怒。じゃあおまえを始末してやる!といきなり敵にまわる。銃から逃げまわる永井だが、いきなり黒い粒子でできた輪のような分身(なんと説明すればいいのかわからないが、一応自立して動くのでエクトプラズムとか魂とかではないらしい)を出されて攻撃される。ヤバい!と思ったら自分の分身(「幽霊」)も出た! というわけで観客を置いてけぼりにした激しい戦いのすえ、永井は逃亡。佐藤は車椅子に乗せた男を連れてテレビの前にあらわれる。

「亜人第二号とされる田中くんです。日本政府は彼を保護すると言いながら、実際には拘束して人体実験の材料にしていました。製薬会社や武器会社は彼を利用した人体実験により大きな収益をあげています。その人体実験の証拠は亜人.comにアップロードしたから見てください。我々は日本政府の手から離れて亜人の安全が守られる亜人自治区を要求する!」

実はのちに判明するのだが亜人第一号である佐藤は「保護」されてから20年間も人体実験の材料とされていたが脱出し、同じく二年間にわたり人体実験の材料だった田中を救出、二人して第三号永井を助けに来たのだった……って戸崎をはじめとする厚労省役人は不死の人間が手に入っても20年間毒ガスかがせたり手足を切ってみたりする以外のことは何も思いつかなかったのだろうか? そりゃあこの国の科学技術が衰退するはずである。アミバ様だってもうちょっといい使い方を思いつくよ! そして二度も脱出されているにもかかわらず、しょうこりもなく同じような場所で同じように人体実験してるとか本当に学習能力がなさすぎて頭が痛くなる。なお、この低レベルな政府に戦いを挑む佐藤はといえば「これでゲームオーバーだ」「さあ、ショータイムといこうか」などと自分の行動にナレーションをつけるゲームの始まりです野郎なのだが、ヒマなときはいつも携帯ゲームで遊んでいるので本当に単純なゲーム好きだという可能性も。うんそれならしょうがないな……って納得するかっつーの!

 

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