柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『カーラヌカン』 沖縄発の癒し系映画が、吉本がからんでいるというだけで癒やしとは正反対のドス黒い澱がたまっていくような気がするのはなんでだろー? (柳下毅一郎)

公式サイトより

カーラヌカン

監督・原作 浜野安宏
脚本 岩下悠子、杉山嘉一
出演 GACKT、木村涼香、加藤登紀子、マリーン、油井昌由樹、木村祐一、秋吉久美子

 

製作・配給Katsudoということで、おなじみ吉本興業案件である。沖縄発の癒し系映画のはずなんだが、吉本がからんでいるというだけで癒やしとは正反対のドス黒い澱がたまっていくような気がするのはなんでだろー? えー、本作は沖縄出身のGACKTが美しい容姿を持つ世界的カリスマ・カメラマンという、どんだけ媚びたらそんな役を考えて、どんだけナルシストならそんな役受けられるんだと言いたくなる役を演じ、沖縄の海から全裸であらわれる美少女と恋に落ちるのである。ヒロインは新体操をやっていたというタラコ唇の美少女木村涼香。本作で原作・監督をつとめるのはライフスタイル・プロデューサー浜野安宏。まあそうそうたる経歴の持ち主のようなので、功成り名遂げた有名人が、自分のメッセージを映画にして世に広めようと思いはじめるというたいへんはた迷惑な……なおこの映画以外に二〇一四年にはフライフィッシングの経歴を活かして自分が釣りをするところを撮ったセルフ・ドキュメンタリー『さかなかみ』を監督、今年に入ってワイオミング州の山への自身の愛を訴えるドキュメンタリー『TETON 山の声』を製作している。まあいろいろ訴えたい人なのである。

 

 

さて「世界を舞台に活躍する写真家の大山光(GACKT)は、よく引き締まった身体、易しい面影をもつ美しい男である」東京での華やかな暮らしにむなしさを感じたGACKT、癒やしを求めて沖縄を訪れる。八重山諸島のどこかということで島の名前は明示されないんだが、ヒロインの名前が石垣真海なんだから石垣島でしょうな。名所をあちこち案内してくれる若者にも「オフのときにはカメラは持たないんだ」とつれない。ところがある午後、どこからともなく声が聞こえ、蝶に誘われるようにふらふら森の中に入っていくと、人気のない入江に出る。海辺に落ちているショールを拾い上げてふと海を見ると、そこに忽然とあらわれるのが全裸で泳ぐ美少女(木村涼香)である。その美しさにひと目で魅せられた光。ショールを持ち帰ってたずね、それが島の織物師石垣紗久子(秋吉久美子)の作品だと教えられ、彼女の元を訪れるが、すげなく追いかえされる。

「すごく美しい人だった……人類の祖先はあんな風に海から陸にはいあがってきたのかもしれない」

突然意味不明のスピリチュアルなことを言い出すGACKTさんなのである。その夜、島の人々が全員集まるという「ニライカナイ・フェスティバル」のことを聞きつけ、さっそく出かける。と、すると例の美少女が舞台上で踊っているではないか。さっそくカメラを取り出してバシャバシャ撮りまくるGACKT、ってかおまえ「オフのときには……」とか言ってたくせに5Dに白レンズつけてバリバリやる気じゃねーかよ! いきなり最前列に飛び出して傍若無人に撮りまくる謎男に怯えた少女は逃げてしまうが、写真を宿の少年に見せると、それは紗久子の娘だと教えられる。だが、真海の写真は撮らないでくれ、と頼まれる。なんでもノロの血筋である紗久子、旦那が彼女を捨てて東京で他の女と暮らしているのを強力なノロである母(真海の祖母)に見抜かれて深い傷を負ったので東京から来た男には警戒感を持っているのだという。だが、そんなのは右から左へ聞き流すGACKTさま、またしても蝶に誘われて例の入江に行くと、そこに真海が立っている。

 

 

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