柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『ルパン三世』 すべてがどこまでも中学生な北村龍平映画(柳下毅一郎) -4,928文字-

FireShot Screen Capture #021 - '映画『ルパン三世』公式サイト' - lupin-the-movie_jp

 

『ルパン三世』

監督 北村龍平
脚本 水島力也
ストーリー 山本又一朗、北村龍平、ジョセフ・オブライアン
音楽 アルド・シュラク
出演 小栗旬、玉山鉄二、綾野剛、黒木メイサ、浅野忠信

 

ico_yan 山本又一郎×小栗旬×モンキー・パンチ×布袋寅泰×北村龍平=? いったいどんなものが生まれるのか? と見る前は思っていたのだが実はこの方程式を解くのは簡単で、最後に「北村龍平」を掛けた時点ですべてが北村龍平映画になってしまうのだった。恐るべし龍平パワー。当たり前だなどと言わないでいただきたい。この映画だって山本又一郎式底抜け超大作(もれなく小栗旬つき)になってもよかったんだし、黒木まんが映画(黒木メイサをヒロインにしたまんが原作映画)というジャンルも厳然と存在しているのを忘れてはなるまい。だがそのどれにもならず、出来あがったのは立派な龍平映画。つまり鋲を打った黒いロングコートをまとった金髪の悪者がキャハハと高笑いしながら両手でサブマシンガンを乱射し、黒づくめのロングコートの男が蹴って飛んで三点着地を決めるという奴である。ゴジラからルパンまですべてを龍平化してしまうさすがの龍平力! というわけで……

 

映画の冒頭、つったっている黒ずくめの三人の男女。まぎれもなき龍平映画である。彼らは国際的泥棒組合〈ザ・ワークス〉の首領の命を受け、シンガポールの個人博物館に所蔵されている古代オリンピック第一回アテネ大会で授与された金メダル(……)を盗むためにやってきたのである。峰不二子(黒木メイサ)、ジロー、ピエールの三人は……え、ルパンは? ルパンはいないの? いないのである。重量感知装置つきの床をまたぎこすために天井からぶらさがったりジェットパックを使ったり、三者三様の手でガラスケースに迫るが、最初にたどり着いたのは不二子であった。手を伸ばそうとした瞬間……爆発とともに床が抜けてガラスケースごと金メダルは落ち、下で待ち構えていたルパン三世(小栗旬)がまんまとゲットする。

そのまま持って逃げようとするルパンだが、その前に立ちふさがったのがマイケル(シェリー・イェン)。金メダルを渡さないと不二子に仕掛けた爆弾を爆破する、と脅してまんまとメダルを奪い取る。ルパンは不二子にだけは弱いことを手にとった巧みな手口で……いやいやいや、おまえ誰だよ!(台湾のアイドルらしいので、中国圏への売り込みを狙う山本又一郎の策謀なのかもしれない)。

この映画、いろいろ納得できないことは多いんだが、多くの人が危惧していたとおり最大の問題はここである。いくら小栗旬が「ふ~じこちゃ~ん」と猫なで声を出そうと黒木メイサがちっとも色っぽくも可愛くもなく、二人のあいだに何一つケミストリーが生まれない。まあ龍平に女の子をセクシーに撮るなんてことができるわけもなく、せいぜい小学生的な記号的色気表現(パンチラとかミニスカとか)程度なのだからしょうがない。だがそれではルパンの行動原理がまったく納得できないではないか(そういうことになっているから、というお約束でしかない)。そんな不二子の行動に一喜一憂するさまはどう見ても童貞なのだが、それが龍平イズム

 

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