柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『娚の一生』 エロにも暴力にもトヨエツ一人勝ち。みんなこれを見てトヨエツの恐ろしさを知るといいよ!(柳下毅一郎) -2,601文字-

FireShot Screen Capture #098 - '映画『娚の一生』公式サイト' - otokonoissyou-movie_jp

 

娚の一生

監督 廣木隆一
脚本 斉藤ひろし
撮影 鍋島淳裕
音楽 遠藤浩二
出演 榮倉奈々、豊川悦司、安藤サクラ、向井理

 

face さて、本作はキャスティングがすべてである。ぼくはもとよりトヨエツのことが大好きで、すべての底抜け超大作にはトヨエツをキャスティングすべきだと信じているのだが、本作はトヨエツ×榮倉奈々のコンビがあまりに破壊的で、いつもの榮倉奈々のいいところ(駄目なところ)も出ないという恐ろしさ。みんなこれを見てトヨエツの恐ろしさを知るといいよ!

娚の一生(1) (フラワーコミックスα)
原作は西炯子の同名コミック。東京で恋と仕事のストレスに疲れた三十代美人OLが祖母の死をきっかけに田舎に引っ込むと、その家には祖母と訳ありだったらしい眼鏡の枯れた大学教授が住んでいて……というお話。都会で疲れた女が枯れた男相手に恋をするというところがキモなんだと思うのだが、その相手がトヨエツじゃあ百パーセント現役ではないか! 一応原作でも51歳という設定らしいのでそんなにおかしくはないはずなんだが、いくら白髪にしたってトヨエツじゃダメだよ! トヨエツが「ぼくと恋愛、練習してみなさい」って言ってもただのナンパにしか聞こえない! そういうわけで、主演の二人をキャスティングしてしまった時点でこの結果は見えていたのだった。

「東京のあいてー企業」につとめていたつぐみ(榮倉奈々)は鶴水市の祖母とよの家に戻っていたときにたまたま祖母の死を看取り、そのまま居着くことになる。高名な染織家だった祖母の家、風呂は薪で沸かさなければならない不便な暮らしだが、東京の喧噪に疲れた彼女にはどこか落ち着くものがある。鄙には稀な美人が居着いているというので、村の若者たちも浮き立っており、市会議員の馬鹿息子をはじめつぐみのご機嫌うかがいをする男たちは引きも切らない。ところで本作、榮倉奈々の映画を見てはじめて彼女のデカさを実感できた。その点では廣木隆一も『余命一ヶ月の花嫁』でも使っているだけに見せ方を心得ている。ただ問題なことにでかいだけでこれがセクシーでもなんでもない。風呂をわかすかわりに身体を拭くだけで済まそうとするつぐみがバックヌードで背中を見せる場面もあるのだが、「なんかたくましい……」としか思えないのである。

 

葬儀の翌日、つぐみが起きだすと、家の前に眼鏡をかけた初老の男(豊川悦司)がいる。

「ええ香りしてますな。コーヒー、一杯もらえますか?」

と挨拶もせずにいきなり上がりこむずうずうしい男。えー、と心中おだやかならぬまま、コーヒーを差し出すつぐみ。

 

 

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tags: 向井理 安藤サクラ 廣木隆一 斉藤ひろし 榮倉奈々 豊川悦司 遠藤浩二 鍋島淳裕

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