柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『フローレンスは眠る』 親族同士がドロドロの争いをくりひろげる「同族企業の闇」・・・これが異常にわかりにくくて (柳下毅一郎) 

公式サイトより

フローレンスは眠る

監督小林克人、小林健二
製作 小林稔、松原真
脚本 小林克人、小林健二、月瀬りこ
撮影 黒石信淵
編集 小林克人、小林健二
音楽 前口渉
主題歌 吉田美奈子
出演 藤本涼、桜井ユキ、前田吟、池内万作、東幹久、宮川一朗太、村上ショージ、岸明日香、山口果林、山本陽子、山本學

 

face 中堅化学工業メーカー佐藤理化学工業は同族経営の非上場企業として創立七十年を迎えようとしていた。社長佐藤善一郎(山本學)は自分の息子英樹(宮川一朗太)に三代目社長の地位を譲ることを決める。だが、英樹の社長就任が決まるはずの取締役会に、当の本人は出てこない。会社には脅迫状が届けられる(古式ゆかしく活字の切り貼り)。「次期社長の身柄はあずかった。返して欲しければ“フローレンスの涙”をよこせ」蒼ざめる現社長。はたして“フローレンスの涙”とは何なのか? 犯人の狙いはいったいどこに? そして暗躍する副社長勇次郎(前田吟)の狙いは?

キャストだけ見れば普通に東映あたりで作ってそうな社会派企業サスペンスドラマ。なのだがこの存在を知る人は少ないだろう。監督は前作『369のメトシエラ』(2009)が「当初、渋谷ユーロスペースでの1館のみの劇場公開でした。しかし公開後、『ぴあ初日映画満足度ランキング』の1位に輝き、多くの観客の絶大な支持を得て、独立系映画では異例の全国40館で上映、観客動員数は2万人を超えるに至りました」という小林兄弟。まあほぼこの三兄弟の自主製作映画と思われるのだが、キャストもロケ地もほぼ普通の商業映画と変わらぬ豪華さ。主題歌はなんと吉田美奈子だ! まあみな仕事に引っ張りだこという立場ではないのはわかるが、それにしたってこのキャスト……で、これだけ本格的な映画の格好してるのにやたらセリフばかりで整理されてない話をわかりにくい演出で語るいかにも自主映画な感じの奇妙なアンバランスさ。これはいったい……

 

 

ところで“フローレンスの涙”とはなんだろうか? 世界最大のブルー・ダイヤ、ホープ・ダイヤモンドは持ち主を破滅させる“呪いの宝石”として有名だが、そのサイズにも異動がある。1668年にルイ14世が購入したときには112カラットあったダイヤだが、その後のカッティングで44.5カラットになった。つまり半分以上がカットされてしまったわけである(ここまでは事実)。その残された半分、同じサイズのダイヤが存在し、“フローレンスの涙”と呼ばれているという(ここからは映画の設定……だと思う)。まあ常識的に考えてカットするってのは周囲を削って形を整えることなんだから、真っ二つに割った同サイズのものが残るわけじゃないんだけど、そういう常識が通じない世界もある。本当にその残りのダイヤが闇に存在すると信じている人もいるかもしれない。だからまあ、そういう伝説があってもおかしくはないんだけど。

脅迫状を見た善一郎は驚愕する。なぜこの脅迫犯は“フローレンスの涙”のことを知っているのか?

「フローレンスの涙のことを知っている人間は四人しかおらん。わしと勇次郎、あとの二人は死んでいる!」

 じゃあそのことを知っている人間が犯人だ、というわけなんだけど。

 

 

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