柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『ノーマーク爆牌党』 麻雀漫画史にその名を刻む金字塔を原作にして、生半可なものを作ってもらっては困るのである (柳下毅一郎)

公式サイトより

 

ノーマーク爆牌党

監督・脚本 富澤昭文
原作 片山まさゆき
撮影 甲斐公康
音楽 浦本和宏
出演 石田明、矢本悠馬、長澤茉里奈、高崎翔太、モロ師岡

 

『ノーマーク爆牌党』とはなんなのか。知らない人にはふざけたタイトルのマイナー麻雀漫画の映画化にことさらに文句をつけているように見えるのかもしれない。だが、これはそんなものではない。片山まさゆきの『ノーマーク爆牌党』は麻雀漫画史にその名を刻む金字塔なのだ。ぼくはかつて「世界三大麻雀漫画」としてこのタイトルを上げたことがある。世間的には『アカギ』だ、『哭きの竜』だ、ということになるのかもしれないが、麻雀を通じてキャラクターを描き、闘牌によって物語をつむぐという意味で『ノーマーク爆牌党』ほど考え抜かれた漫画はないのである。と書けばこの映画化に対するぼくの思いはだいたい伝わるだろう。『デビルマン』はただ出来が悪かったからボロクソに言われたわけではない。この原作で、生半可なものを作ってもらっては困るのである。

『ノーマーク爆牌党』は天才雀士爆岡団十郎と、彼がふるう驚異の「爆牌」をめぐる人間模様を描く漫画である。爆牌はどう見ても無謀な暴牌にしか見えないのだが、その捨て牌で相手から出るはずのない当たり牌を誘いだすという必殺技。名だたる麻雀の名手たちは爆牌に翻弄され、爆岡の天才に魅了されてゆく。あたかも卓上のすべてを知っている全知の神が放つがごとき爆牌の謎。その必殺技を破るための雀士たちの葛藤と努力がすべて雀卓の上で披露され、その中でライバルたちのキャラクターが浮かび上がってくる。とりわけ「伝説男」八崎真悟は作者さえもが驚くほどの成長を遂げ、名脇役として語り継がれる存在となった。凡人である主人公、鉄壁守は危険牌は絶対に切らない「爆守備」で爆岡に挑み、幾度も叩き潰されながらも諦めずに戦いつづける。それは片山まさゆきがずっと描いてきたツカンポの花を咲かせながら諦めずに廻しつづける不ヅキの男たちの雄々しい凱歌でもある。

 

 

さて、それが映画化となったわけである。主役はNON STYLEの石田明ということだが、正直言って映画の主役を張れる顔ではない。ひょっとして髪型を再現してみたかったとかそういう理由だろうか? まあ特に演技力の求められる役柄ではないとはいえ、だったらせめてもうちょっと……原作は麻雀漫画なのでひたすら手牌を見ながら脳内会話をしている。映画になればこれが盛大な副音声映画となるのは仕方ない。それでも闘牌がおもしろければそれで一本の映画にはなるはずだ。『咲-Saki-』は超能力麻雀であるにもかかわらずちゃんと闘牌で見せていたぞ。で、これどうなのという話なんだが…

 

443f2910ab9081e6c5fb7aa8c00ee84d2

(残り 1365文字/全文: 2547文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

tags: コミック原作 モロ師岡 副音声映画 富澤昭文 浦本和宏 片山まさゆき 甲斐公康 矢本悠馬 石田明 長澤茉里奈 高崎翔太

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ

タグマ!サッカーパックのご案内
全35メディアが読み放題