柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『劇場版 忍者じゃじゃ丸くん』 さまざまな「安易な映画作り」をあげつらってきたが、「安易なクラウドファンディング」はその最たるもの

劇場版 忍者じゃじゃ丸くん

監督 柴田愛之助
脚本 平谷悦郎、柴田愛之助
撮影 関将史
主題歌 MOOMIN
出演 杉原勇武、川連廣明、倉持由香、コウメ太夫、新田匡章、虎牙光揮、島津健太郎、富田麻帆、遊木康剛、高橋良輔、辻本一樹、亜紗美、坂口拓

 

1985年に発売されたファミコンのレトロゲー『忍者じゃじゃ丸くん』シリーズが発売35周年記念で映画化。いやそれにしてもこれおかしくない? 亜紗美(とっくに引退済み)が出演してるって、そうとう昔に作ってないか?と思って調べたら、実に2014年に主要撮影は終えた状態で完成のためのクラウドファンディングを募集していた。それから完成までに6年かかってようやく公開にこぎつけたという顛末である。この連載をやっていく中でさまざまな「安易な映画作り」をあげつらってきたわけだが、「安易なクラウドファンディング」はその最たるものといわざるを得ない。この点だけでもおおかたいいかげんにしろという話だが、そもそもなんでそんな昔のゲームを映画化しようと思ったのか。そうしたらクラウドファンディングページに監督のコメントがあった。

 それからアメリカ製のニンジャ映画に傾向していき僕の夢はショー・コスギさんやメナハムゴーラン率いるキャノンフィルムズの様な【ニンジャ映画】を撮りたいと思う様になりました。

あー冒頭のGUILDのカンパニーロゴがキャノン風で、これじゃまるでショー・コスギのニンジャ映画だな、と思ったのは間違いではなかったのか。ぼくはいまだにこの映画の原作のゲームがどんなものか知らないので、それをどう脚色した結果こうなったのかはわからないが、映画のキャラクターが忍者でもなんでもなく、これがたんなるクンフー・アクションでしかないということだけは断言できる。この雑なアメリカン・ニンジャ観、舞台を秋葉原にしているところも、遅れてきたクールジャパン映画そのものである。残念ながら思っていたような金額では海外に売れなかったせいで製作難航したようで、そういう安易なところがまたクールジャパン……

 

 

監督の柴田愛之助、どこかで聞いた名前だと思ったら渋谷を生きるストリートのリアルを描いた『HO~欲望の爪痕~』という謎映画の監督だった(キャストも一部かぶっている)。実はこの映画の直後に撮っていたものがようやくいまごろ公開ということになったのか。長いような短いような。

 

 

日本のどこかにある忍者の里、長の命を受け、次期当主の座をめぐってじゃじゃ丸(杉原勇武)と影丸(新田匡章)が激しい格闘を繰りひろげる……てこれが完全なクンフー対決で、映画がはじまった瞬間に「……忍者ってなに?」となってしまい、以後、それが解消されることはなかった。というわけでクールジャパン変な日本ものらしきヌンチャク、トンファーを使った激しいアクションについて、突っ込むのはここまでですがこのあとの「激しいアクション」を見るたびに、毎回「まあ、頑張ってはいるけど、カット割りすぎだよな。あと忍者の意味はどこに……」の思いが脳裏に浮かんでいました。

 

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