柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『彼女は夢で踊る』 ストリッパーがレディオヘッドの「クリープ」に合わせて青春の思い出とともに踊る。ストリップ劇場を舞台にしたこの広島映画を、ぼくは嫌いになれない

公式サイトより

彼女は夢で踊る

監督・脚本・編集 時川英之
企画 横山雄二
撮影 アイバン・コバック、ジェレミー・ルビアー
音楽 佐藤礼央音楽プロデューサー 鯨永知生
挿入歌 レディオヘッド、松山千春
出演 加藤雅也、犬飼貴丈、岡村いずみ、横山雄二、矢沢ようこ、末武太、高尾六平、松本裕見子、糸永直美

最初に言っておくが、さまざまな欠点にもかかわらず、ぼくはこの映画を嫌いになれないでいる。なぜなのか……というところにあるいは映画の秘密があるのかもしれない。本作は広島県広島市内に建つストリップ劇場、広島第一劇場を舞台にしたドラマである。監督は広島映画の雄、時川英之。シネマの天使は福山市の映画館大黒座閉館記念の映画。『鯉のはなシアター』は広島の架空の映画館の閉館話にカープのリーグ制覇をひっかけた広島カープ版『2番目のキス』という野心作。で、本作は広島第一劇場の閉館にまつわるドラマ……ってなんなんだ、閉館マニアか!

さらに驚くのは挿入歌としてレディオヘッドの「クリープ」がかかること。ストリッパーがこれに合わせて踊るわけだが、さすがにこの規模の映画でこんな洋楽のヒット曲を使うのは珍しかろう。かなり頑張ったと言わざるを得ない。金払ったからには……と三回もかかるのには笑ったが。さらに衝撃だったのはこれが青春の思い出の曲としてかかること。もう90年代も青春の傷みとともに思い出す時代なのね……

広島第一劇場に閉館の日が来る。客も減り、建物も老朽化し、もはやストリップ劇場の時代も終わろうとしている。ついに閉館を決意した館主・木下(加藤雅也)は最終公演となってもいつもどおりの日々である。ヨーコ(矢沢ようこ)をはじめとする旅回りのストリッパーたちを出迎えると、開場中は表で新聞を読んでいる。従業員から「最後なんですから」と言われても、かたくなに踊りは見ようとしないのだ。

 

 

信太郎(犬飼貴丈)は広島市内のバーで飲んだくれている。失恋の痛みにひたすら浸っているダメ男。見苦しい飲み方を見ていた隣で飲んでいた美人、ショットを一緒に飲もうと誘い、一緒に飲むとセクシーに腰をくねらせて帰っていく(金は払わないのか!) バーテンが「エロい踊りやったなー」ともらすのでエロいことになってるんだが、店も狭いしカメラ・アングルに制限もあるしで、体くねらせてるだけなんだよな。ともかく彼女が旅回りのストリッパーだと知った信太郎、さっそく広島第一劇場に踊りを見に行く。

 

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