柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『20歳のソウル』 21世紀になろうと高校生は青空の下スローモーションで走る。屋上と青空は嫌になるほど出てくる。高校生の青春ですんで

 

 

公式サイトより

20歳のソウル

監督 秋山純
原作・脚本 中井由梨子
提影監督 百束尚浩
提影 島田貴仁
主題歌 Kenta Dedachi
出演 神尾楓珠、尾野真千子、福本莉子、佐野晶哉、前田航基、若林時、宮部のぞみ、平泉成、石黒賢、高橋克典、佐藤浩市

文化庁「ARTS for the future!」補助対象事業

 

市船こと船橋市立船橋高校エクスプロイテーション! サッカーや野球の強豪であるスポーツ校として知られる市船で伝説と語り伝えられているのが応援歌「市船Soul」。市船吹奏楽部の生徒が作曲した曲で、トーナメントのここぞという場面でしか演奏されないが、されたときには必ず点が入る(あるいは守りきれる)というご利益あらたかな神応援曲なのである。その作曲者、浅野大義くんは2017年1月に20歳という若さで夭折した。その彼の伝記映画である……ってことは「市船Soul」作ったのって2014年とか? 伝説っていうにはちょっと早すぎるような。そしてわずか20年の短い生涯を描くのに2時間16分という超大作なみの上映時間! なんでこんなことになっているかというと、この映画、登場人物全員が自分の内心をすべて発声する完全な副音声映画であり、しかも省略の美学なるものをまったく知らない作者のお陰で、一から十まですべてが描写されるくどい上にくどく屋上屋を重ねる映画となったのである。そのくせ教師役の佐藤浩市を筆頭にキャストは予想外に豪華で劇場は満員。東京オリンピックより全然入ってたよ……

 

浅野大義(神尾楓珠)と仲良し三人組は憧れの市立船橋高校に入学、念願の吹奏楽部に入ったものの、連日よさこいソーランの練習をさせられて閉口している。顧問教師高橋(佐藤浩市)に文句を言っても「いい音楽はいい人間関係から生まれる。お互いのことを知らないといい音楽は作れないだろ?(だからよさこいソーランを踊れ)」とよくわからない理屈で丸めこまれてしまう。佐藤浩市演じる「タカケン」こと高橋先生、吹奏楽部の定期演奏で群舞をさせたり、吹奏楽コンクールでは上手い下手にかかわらずかならず三年は全員参加させるなど、かなり強めの教育方針を持つ名物教師らしく、この映画の第二の主人公となってもいいはずなのだが、あまり人物像が突っこまれず残念である。これ、映画としては市船の話だけで作ってもいいくらいなんだけど、メインになってるのは大義が病魔に侵されてからの愁嘆場なんだよなあ。日本映画にはありがちとはいえ、残念なことである。

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