DFの退場、監督の采配ミス。それでも後半の奮闘に光が見える【島崎英純】2017明治安田生命J1リーグ第19節・コンサドーレ札幌戦レビュー

局面で劣った代償

 32分、福森晃斗のCKから都倉賢がヘディングシュート。浦和レッズはマーカーの槙野智章が競り合ったが敗れて失点を許した。セットプレー、十全に監視した中での正当な個人勝負で劣れば代償を払うしかない。ただ、これだけ簡単に被弾していてはゲームプランを構築できない。 

 浦和の低迷は、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督のチーム戦術が破綻したからではない。単純に主力選手のプレーパフォーマンスが落ちているのだ。特にストッパーの槙野と森脇良太の低調は目を覆いたくなる。今の浦和守備網はJ1のどんな相手と戦っても失点のリスクが高い。これでどうやって勝利への道筋を見出だせばいいのか。

 浦和の布陣は3-4-2-1。前線は1トップ・興梠慎三にシャドー・武藤雄樹&李忠成のトライアングル。コンビネーションが秀逸で動き出しも十分、3人は攻守に手を抜かない究極のチームプレーヤーだ。前回リーグ戦でこのトリオが先発したのは第15節のジュビロ磐田戦(●2-4)だったが、それでも3人はチーム戦術を促進させる効果をもたらせる。実際に札幌ドームでの彼らはパスレシーブ、フリック、スルー、ワンタッチパスと、あらゆるスキルを駆使して局面打開を果たしながら、攻守転換のネガティブトランジションでは献身的なプレスバックで危険を未然に防いだ。

 ただし、もうひとつの狙いだったサイドアタックは不発に終わった。個人勝負に優れる関根貴大と駒井善成が先発したのに、彼らが1対1で相手と対峙するシーンは稀だった。遠藤航、阿部勇樹らからのサイドチェンジパスもほとんどなし。コンサドーレ札幌の前線プレスが利いていたのか、浦和のビルドアップがスムーズさを欠いたのか、その理由は分からない。しかし、中央エリアの攻撃構築が好転すればサイドエリアも活性化されるのは過去の前例が示していた。前半の浦和の攻撃に物足りなさがあったとすれば、サイドでの局面勝負が発生しなかった点を挙げる。ただし、数的不利になった後半は関根のスプリントが爆発している。

 札幌のシステムは3-5-2。浦和と完全マッチアップするかと思われたが、前線を都倉とヘイスの2トップにした。特殊なビルドアップを構築する浦和に対して2枚で前線プレスを掛けるのは常套で、四方田修平監督の考えが透けて見える。また中盤の並びも2シャドーにアンカー、そして両翼が立つ布陣で、この陣形も浦和に合わせたものではない。ただ、札幌は守備時に5-4-1へ可変してブロックを築いていた。両サイドアタッカーがバックラインへ吸収され、アンカーの宮澤裕樹、シャドーの兵藤慎剛&チャナティップ・ソングラシン、そしてFWの都倉が中盤に戻って4人のラインを形成し、最前線にヘイスを置く布陣にトランスフォームするのだ。つまり札幌は攻撃時に局面ギャップを作り、守備時にはマッチアップ策を採る。ちなみに札幌は前回対戦のときも同じ手法を用いていた。

 先ほど、前半は浦和の攻撃が機能したと記したが、それは札幌も同じだ。浦和と同等のポゼッションを誇ったし、敵陣へ侵入するシーンも頻繁だった。ただ、札幌のパスワークはぶつ切りで、最前線のヘイスがボールキープを果たせずにロストする場面が目立った。ただ都倉は空中戦で優位に立っていて、浦和ストッパーの劣勢を示唆していた。そして32分の失点……。厳しくも現実を直視すべき現象だった。

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