石井紘人のFootball Referee Journal

【無料記事・記者会見】2014FIFAワールド杯ブラジル大会 西村雄一、相樂亨、名木利幸ブリーフィング

117日、JFAハウス会議室において、2014FIFAワールドカップブラジル大会のレフェリーに選出された西村雄一、相樂亨、名木利幸の記者会見が行われた。

 

上川徹・日本サッカー協会審判委員長:

お忙しい所、お集まり頂いて、ありがとうございます。昨日、FIFAの方から2014年ブラジルW杯のリストが発表になりました。リストの名前は、258のサポートレフェリーということで、全部で33組のレフェリーチームの発表がありました。そこに、西村君、相樂君、名木君の3名が、この25名の方、実際に試合を担当する方に選ばれました。

アジアからは4つのトリオが選ばれました。非常に嬉しいことですし、W杯での活躍を期待したいと思っております。

選考についてですけども、約二年半、W杯プロジェクトということで。最初は2011年のクラブW杯、そこから二年半のプロジェクトがありまして、候補者に上がったレフェリーは52組。最終的にそこから25組に絞られた。その二年半のプロジェクトの中で、相当なプレッシャーもあったと思います。

そして、私もFIFAの審判委員会のメンバーでありますけど、アジアではもちろんですけど、彼らはFIFAの大会にも参加しています。そのFIFAのなかでも非常に高い評価を彼らは得ている。信頼を受けている声に対し、非常に嬉しく思っています。

日本人としては1998年から五大会連続で日本のレフェリーがW杯に指名される。西村君と相樂君は2010年大会に続いて。名木君は今回が初。

これまでもW杯に日本のレフェリーは呼ばれてはいるんですけど、トリオ、一つの国から三人でということはありませんでした。日本サッカー協会としても、是非、同じ国から三人をということを考えておりまして、今回、初めてになります。

色々な形で、我々審判員の成長をサポートして頂いた、協会やJリーグ、地域や各都道府県協会。またはサッカーファンの皆様に、改めて感謝を述べたいと思います。

 

西村雄一:国際主審の西村雄一です。このたび、2014年ブラジルW杯のアポイントを頂きました。これも、日頃、暖かくサポートしてくださっている皆様のおかげだと思っています。本当に、心より感謝申し上げます。私自身としましては、どの試合も、決勝戦のつもりで、臨んでいきたいなと思っております。私が試合を担当した時のキックオフの笛は、お世話になった皆様への感謝の気持ちを込めて、キックオフの笛としたいなと思っています。今後とも宜しくお願い致します。

 

相樂亨:こんにちは。副審の相樂です。いま、西村さんの方からもありましたけど、皆さんのサポートのおかげで、ブラジルW杯に選ばれたと思っています。今回は三人セットで組めるということもありますので、日本人三人で組んでいるコンビネーションの良さを上手く活かしてですね、絶妙なコンビだからこそ出来るレフェリングというのを磨いていって、力を発揮できたらなと思っています。

 

名木利幸:こんにちは。副審の名木です。アポイント頂けたことは本当に光栄で、西村さん、相樂さんとトリオで行かせて頂けるというのは、私にとっては最初で最後のW杯となるので。本当に光栄なことで、どうやって、今の気持ちを表現すればいいか。言葉が見つからない状態です。今まで多くの方に出会って、サポートして頂きました。たくさんの出会いに心から感謝申し上げたいと思います。ブラジルでは精一杯やってきたいと思います。

 

―出発はいつですか?

 

上川:先日、開かれた委員会のなかでは、大会の十日前には現地に入るという話を聞いております。その前の二月の中旬に、選ばれた主審だけを集めたセミナーが開かれて、三月の終わりから四月の初めにかけて、トリオで、FIFAホームでセミナー、研修会を開く。それを経て、大会の十日前くらいに入る予定です。

 

―フィジカルテストはない?

 

上川:そのコースのなかにフィジカルテスト、あるいはフィジカルチェック、色々なものが入ります。

 

西村:いま、上川委員長がおっしゃった通りで、大会前のセミナーということであれば、レフェリーだけ、そしてトリオとしての二回に分けて行われます。2010年だと、約一ヶ月前にフィジカルテストがありました。

 

―はじめて行かれた時はプレッシャーがあったのでは?

 

西村:2010年の時は、W杯に行けると思っていなかったので、何も失うものがない状態で頑張っていたら、アポイントが舞い込んできたっていう感じだったので、緊張とかそういうこともせずに、ありのままにやっていこうと臨んだのが2010年です。

 

2010年から、どのような大会にしたいのかというのをお教え下さい。

 

西村:2010年を振り返ると、いつも思うのは、とても上手ではなかったなという思いがあります。ですので、それを今回、少しは自分が成長したと思えるような形で、選手の一生懸命さに私達もついていきたいなというのが一番の思いですね。やっぱり、あの、W杯であまり上手くいかなかったという事もあるので、W杯の場でしっかりと自分の出来ることをやりたいという思いが強いです。

 

相楽:私もだいたい同じになっちゃうんですけど、前回は、やっている間は無我夢中でやっていたんですけど、戻ってきて映像を見た時に、もう少し上手く、綺麗に出来たなというのが振り返るとあるので、今回は落ち着いて入れると思うので、より完成度を高く、クオリティーを高くしたいなと。それは前回の経験をふまえて、完成度をもう少し高くしたいと思っています。

 

名木:雰囲気というのは、コンフェデレーションズカップを経験させて貰いましたし、オリンピックっていう大きなトーナメントも経験させて貰っていますので、緊張感とかそういうのは今の所はまったくないです。むしろ、いま、質問を受けて、こうやってお話をさせて頂いている方が、私にとっては今までにない、これ以上のことはないかなと思っております。

 

―上川さんに質問ですが、FIFAから高い評価を受けているというのは、どのような部分でしょうか?また、西村さんに日本人トリオの良さについてお教え頂ければと思います。

 

上川:一番分かりやすいのは、2010W杯でも非常に重要な試合を担当したというのがあります。そして、そのW杯以降の2010年で、クラブW杯では決勝を担当しているということ。そして、オリンピック、コンフェデレーションズカップ。

FIFAも、誰をその大会に指名するのかというのは重要なポイントであって、FIFAのなかではW杯は高いレベルと位置付けられている。そこに指名を受けること自体が、一番、分かりやすい評価かなと思います。

実際に、テクニカル的な所で考えますと、三人のチームワークです。レフェリーだけではなくて、二人の副審のオフサイドの判定の精度の高さだとか、色々な部分をセミナーを通じて、本当に細かく分析したりだとかして審査をされるのですが、トリオとして全体的に高い。

西村君に関しては、これはFIFAの人たちもそうですけど、私も思うのは『判定力』の高さはもちろん、それ以上に動きの面ですね。ポジション取りだとか。彼自身が色々なチームの戦術とかを勉強して、あるいは研究してというのをやっているのだと思いますけど、彼独特の動きの質の高さ。ポジションがよければ、良い判定が下せる。説得力のある判定になっていく。そういう所が西村君のストロングポイントではないかなと。まぁ、いっぱいありますけど。

 

西村:トリオでの良さということですけど、元々、日本人が持っている、お互いを思いやる気持ちというのがありますので、試合中も、お互いに今、何を考えているんだろうということを考えながら試合に臨みます。時代と共に審判のスタイルも変わってきまして、コミュニケーションシステムという通信システムで、試合中に会話をしながら、良いゲームコントロールに繋げられるような有効な情報交換を、瞬時に話をしています。それを日本語で出来るということで、2010年よりも、2014年、この先もどんどん変わっていくと思うんですけど、その試合において、一番ベストな形でゲームコントロールに繋げられるのではないかなと思っています。

 

Footballweekly石井紘人:2010年南アフリカW杯を終えて、トップレフェリーと出会って掴んだものが西村さんも相樂さんもあると思うのですが、それが今までの四年間、Jリーグのジャッジでどのように活きたのか。あと、2014年ブラジルW杯に対し、名木さんも含めて、どのような目標を持っているのかというのをお教え頂ければと思います。

 

西村:私達審判員は、どんな立場でゲームに携わっているのかというのを、2010年の時に気付かせて貰いました。FIFAはサッカーを通して、世界中に感動ですとか、幸せ、喜びですとか、それから絆というのも言ったことがあるんですけど、サッカーボール一つで、そういったものを世界に届けることが出来る。そういった大会の一つの試合に、審判員として携わっているんだというのに気付かせて貰いました。ですので、それからの四年間、自分自身は一つのゲームに全力を注いで、選手がどのようにして、感動を観に来て頂いている方々に届けられるのか。それを我々はどのような形でサポートできるのかというのを、常に頭においてやってきました。それが、2014年に向けての私の四年間で一番心に強く思ってやっていました。今日から大会まででいきますと、これもいつもと変わらないんですけど、一歩一歩本当に良い準備をして、ここから本大会までに怪我はできませんし、昨年も大変面白かったJリーグの開幕もすぐ迫っていますし、Jリーグの試合をひとつひとつ全力で臨んでいくことが一番良い準備になると思っています。

 

相樂:南アフリカで得たのは経験が一番大きいと思うんですけど、だいだいどういう状況でもあわてることなく試合を、端からになっちゃうんですけど、サイドラインから見ることになるんですけども、だいたい動じることなく、眺められるようになって。それが多分、読みの鋭さになっていって、だいたい落ち着いてどんな状況でも見られるっていうことは南アフリカの前よりも後の方が。それは戻ってきて、Jリーグの試合でも活かせていると思います。今後に向けてはですね、さらにこう、さっき言ったように、質を高めていきたい。クオリティーを上げていきたいという部分では、ポジショニング。副審もやはりポジショニングが大事なんで、いつ真後ろから写真を撮られても、必ずラインにいるということはなかなか、90分通して1mmもズレずにいるというのはなかなか難しいんですけど、出来るだけそれに近付けて、90分いつ切り取られても、ラインにいるという状態に、まだまだ近づける余地があるので、それは残りの期間に、さらに集中して、そこまで持っていきたいなと思っています。

 

名木:私は、西村さんや相樂さんが活躍された2010年の頃は、いち国際審判員としてのキャリアを積んでいたんですけども、最近、よく思うのが、二人についていくのが、今までもこれからもそうなんですけど、やっとついていって、迷惑かけないように。なんていうんですかね、西村さんに情報を提供するというか。そういうのが私自身の仕事だと思うんで、相樂さんもおっしゃっていたように、タッチラインから判定をする時の美しさというか、『表現力』というのは高めていく必要があるのかなと思います。これからまた2014年のシーズンがありますけど、そういう部分では、平均を上げていきたいなと考えております。

 

―担当試合は教えてもらえないのと、日本が勝ちあがると吹けない。

 

上川:えぇ。担当試合はそうです。(日本代表が勝ちあがることを)我々もそれを望んでおります。

 

西村:W杯の一試合を無事に終わらせるということは本当に難しいことなんで、喜ばしいことでありますし、大役を頂いたということもありますけど、一生懸命やっていても、判定できないことは人間なのであります。かなり大きなリスクを背負っている。でも、そのリスクを考えていても仕方がないので、勇気を持ってチャレンジしていくというのが、私達三人がやろうとしていることなので、そのなかで選手に勝敗を受け入れてもらえるように、私達はゲームをコントロールしていきたいなと。

 

―――ここから囲み取材―――

石井:『表現力』を2010年の後に意識されたとおっしゃられていて、その辺がJのジャッジでどのように活きているかをお教え下さい。

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